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2017年3月14日掲載 − 脱原発・自然エネルギー − エネルギー選択宣言
1.  電力の小売りが全面自由化された
ドイツでは、電源を明らかにして電力の商品価値と魅力を高めた

ドイツでは1998年4月に改正エネルギー事業法が施行し、電力市場が自由化されました。自由化すれば電気料金が下がる。それが、自由化の理由の一つでした。でも、電気料金は下がったとはいえません。化石燃料の高騰などいろいろな要因が重なり、電気料金はむしろ上がり続けました。


自由化に伴い、消費者は電力を供給してもらう電力会社を選択するばかりでなく、電力商品も自分で選ぶことができるようになりました。それまで通り原子力発電された電力の入った電力(よく「クラシック」と呼ばれる)の他、原子力で発電された電力の入っていない電力商品も登場します。電力商品によって、契約期間や解約期間の契約条件も異なります。電力会社の供給メニューには、消費者が選択できるたくさんの種類の電力商品が登場しました。


再生可能エネルギーで発電されたグリーン電力だけを供給する小売事業者が、新しく電力市場に参入します。ただその数は少なく、ナトゥーアシュトローム(Naturstrom、自然電力の意)社など数社しかありませんでした。既存の電力会社も、再生可能エネルギーで発電されたグリーン電力だけの電力商品をオファーします。特に消費者に一番近いところで電力を供給する自治体の都市電力公社「シュタットヴェルク(Stadtwerk)」が、大手電力に対抗するためにグリーン電力の供給に積極的でした。


当時、ドイツの電力市場には約700社の電力会社がありました。そのうち、約550社が自治体子会社となる都市電力公社でした。ただ市場はというと、プロイセンエレクトラ、エルヴェエ(RWE)、フェアク(VEAG)、ファウエヴェ(VEW)、エエンベヴェ(EnBW)などの大手八社が、市場の80%以上を占有していました。それまで発電と高圧送電しか行なっていなかった大手電力会社。それが、自由化とともに子会社を使って小売市場にも進出します。大手電力は、ほとんど再生可能エネルギーによる発電を行なっていません。しかしその大手が、グリーン電力を購入してグリーン電力も商品メニューに入れました。


一つ注目しておきたいのは、シュタットヴェルク(Stadtwerk)といわれる自治体の都市電力公社の対応です。自治体電力公社は、都市毎、地域毎に設置されている自治体子会社です。地元で発電と配電、電力の小売りを行うほか、暖房と給湯のために熱源を供給します。公社は電力需要の25%を、自社で発電した電力で供給しなければならないことになっていました。しかし、自由化でその義務もなくなります。自由化で競争が激しくなると、経営母体の小さい自治体電力公社には大手に対抗できなくなる心配がありました。それに対抗する手段として、公社はむしろ、再生可能エネルギーで発電されたグリーン電力を積極的に売る戦略に出ます。グリーン電力では、固定価格買い取り制度(FIT)で価格が保証されています。その安定さを逆に有効に利用したほうが、大手に対抗しやすいと判断したのでした。


こうしてドイツの電力自由化では、再生可能エネルギー専門会社のグリーン電力商品の他にも、かなり多くの再生可能エネルギー電力商品が登場します。


自由化後、電力業界が再編されます。大手8社が4社に統合されました。大手はすでに述べたように、子会社を設立して電力の小売りにも進出します。自治体電力公社を買収するなど、大手電力会社は巨大化します。


ぼく自身は自由化後、グリーン電力だけを供給してもらっています。最初は、割高感がありました。しかし価格が安定していたことから、次第に価格差が小さくなっていきました。数年後には、グリーン電力商品の中にその他の電力商品よりも安いものも登場します。石炭、石油など化石燃料の高騰で、グリーン電力以外の電力商品の電気料金が急激に上がったからでした。


「黄色い電力(Yellow Strom)」という格安電力会社が登場しましす。これは、ドイツ最古の原子力発電所(オブリヒハイム原発)で発電された電力を格安で売る電力小売事業者でした。原発が減価償却されてしまっているので、発電コストが安い。だから可能となる格安ビジネスでした。この古い原子力発電所を所有するのは、大手電力会社の一つエエンベヴェ(EnBW)。黄色い電力(Yellow Strom)は、その子会社でした。


原発で使われるウラン燃料は、天然ウランを精製したイエローケーキから造られます。この格安電力を「Yellow」と命名する図太さには、ちょっと驚かされました。


オブリヒハイム原発は、ドイツ政府が2000年に電力業界と脱原発で合意したことから、2005年5月に最終停止されます。ドイツの脱原発政策によって、最初に閉鎖された原発でした。現在、廃炉工事が行なわれています。


自由化から20年近く経った現在、電力商品の数は増える一方になっています。電力商品の価格を比較するサイトがいくつも登場しています。自由化後少し経って、格安電力小売会社も登場してきました。その内、フレックスシュトローム(Flexstrom)やテルダファックス(TelDaFax)はすでに倒産してしまいました。 ドイツでも自由化直後は、日本と同じように電源構成の表示義務はありませんでした。しかし最初の段階から、自主的に電力商品の電源が明らかにされました。原子力がミックスされているのかいないのか、あるいは再生可能エネルギーだけなのか。電力商品のメニューを見れば、ぼくたち消費者にも電力商品に含まれている電源を判別することができました。


ドイツではこうして、自由化と共に発電する電源を消費者が選択することができるようになりました。それは単に、電力商品の販売を促進するための企業戦略に過ぎなかったと思います。でも電源を開示することによって、電力商品の商品価値と魅力を高めることになったのは間違いありません。


(2017年3月14日掲載)

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