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2017年4月09日掲載 − 脱原発・自然エネルギー − エネルギー選択宣言
おわりに

ぼくがこの連載を書くことになったのには、2つのきっかけがありました。


一つは、「はじめに」で書いた被爆二世の男性のことを知ったことでした。日本で、電力の小売りが全面自由化されれば、原子力で発電された電力を使いたくないという被爆二世の男性の希望は達成できるのではないか。しかし、現実はそうでないことがわかりました。


あの時、ぼくは原発のある薩摩川内に向かっていました。ドイツにおける再生可能エネルギーの取り組みについて話すためでした。ぼくにとって、はじめての九州でした。


道中、川内の周辺にたくさんの森林があることを知りました。これをエネルギーのために資源として使えるはずだ。鹿児島には芋焼酎があるから、その製造後に出る糟も発電の原料として使えるのではないか。ぼくはそう思いました。


原子炉の寿命を考えると、原子力発電を続けても、せいぜい後20年も運転できればいいほうです。その後の廃炉に30年かかるとして、川内の町はせいぜい50年しか原子力発電の恩恵を受けることができません。


それに対し、豊かな森林資源と芋焼酎の糟など地元にあるものをエネルギー源として使えば、何世代にも渡って町を持続的に発展させることができます。ぼくは、そう話しました。


でも皮肉なことに、あの薩摩川内で3・11後停止していた原子炉が再び稼働します。ぼくはすぐに、あの被爆二世の男性のことを思い出しました。


たとえ原発が再稼働しても、原子力で発電された電力を使うのを避けることができます。もちろん、この被爆二世の男性のように原子力は絶対にいやだという願いは、かなえることはできません。でも、自分の行動次第では原子力で発電された電力を少しでも回避することができる。それを知ってもらいたいと思いました。


もう一つは、2013年と2015年の夏にベルリンにきた福島県の高校生たちでした。高校生たちは、NPO法人アースウォーカーズの企画するドイツの高校生との交流プロジェクトの一貫でドイツにきました。高校生たちは約2週間ホームステイしながら、ドイツの高校生たちとディスカッションをしました。自らの被災体験も話ました。


その福島県の高校生たちをベルリンで、さよならNukesベルリンの人たちのサポートを得て案内することになりました。でも、ベルリンの観光名所を案内するだけでは、せっかくベルリンにくる意味がありません。自分の脚で歩きながら、その建物や街並に隠されている政治や環境上の意味、社会的背景、歴史などについて話してはどうかと思いました。見て回ったのは、ドイツ連邦議会議事堂、ベルリン中央駅、その他第二次世界大戦におけるナチスドイツの残虐な歴史を伝える施設などです。


街を歩きながら、自分の肌でベルリンを感じてもらう。そして、ぼくがその場に係りのあるエネルギーや政治、歴史の話をする。そうすれば、高校生たちが暮らしの中のベルリンを体験できるのではないか。それによって、政治やエネルギーの問題、歴史が、自分の暮らしと密接に関係していることを知る。それが、自分で考えるきっかけになればと思いました。


ぼくが歩きながら福島県の高校生たちに話したことは、この連載の中にも入っています。


この二つの体験から、ぼくは暮らしに密着した形でエネルギーについて書くことができないだろうかと考えました。それによって、ぼくたち消費者一人一人が自分の身の回りからエネルギーについて考えるきっかけになればと思いました。


これが、この連載を書くことにした動機です。これまでドイツで約25年間エネルギーのことに関心を持って取材し、蓄えてきた知識と考えてきたことをまとめてみたつもりです。著者として、それがうまくいったかどうかはよくわかりません。それは、読者のみなさんに判断していただきたいと思います。


連載するに当っては、いろいろな方からご協力をいただきました。特にドイツに長く暮らしているだけに、日本のエネルギー事情がよくわかりません。自然エネルギー財団の大林ミカさんには、日本のエネルギーの現状についてお話を伺っています。FoE Japanの吉田明子さんからは、パワーシフト・キャンペーンと日本の自然電力会社の状況などについて伺いました。また、ぼくがエネルギー政策メーリングリスト(epp)に入っていますので、そこからも日本の状況についてたくさんの情報を得ました。


ドイツでは、ドイツ再生可能エネルギー機関の企画するプレス向け催し物に何回となく参加させていただきました。各地で取材する毎に、たくさんの方にインタビューに応じてもらいました。


これらたくさんの方々のご協力なしには、この連載は成り立たなかったと思います。心から感謝します。


2017年4月 まさお


(2017年4月09日掲載)

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