ロゴベルリン@対話工房
Google   www を検索 taiwakobo.de を検索
2017年3月20日掲載 − 脱原発・自然エネルギー − エネルギー選択宣言 − 2章 発送電分離と送電網の整備
住民は、送電網建設に反対しているわけではない

ドイツでは地元住民が、高架線を前提とした高圧送電網の整備に強く反対しています。送電網整備計画には、具体的な設置場所は規定されていません。高架線を設置するだいたいのルートが規定されているにすぎません。しかし計画案が公表されると、ルート周辺の地元住民が反対します。送電網を建設するまでに、住民を説得するだけでもかなりの時間を要します。


住民たちは、送電網の整備そのものに反対しているわけではありません。再生可能エネルギーの拡大は支持するものの、周囲の景観を破壊し、電磁波で人体に影響を与える可能性のある高架線の建設に反対しています。


地中ケーブル支持
「プロ・エアトカーベル(地中ケーブル支持)」のグループが地元に設置した地中ケーブル化を求めるオブジェ(下向きの矢印)

ドイツ中部のハルツ地方で、反対住民を取材したことがあります。反対派グループの会長ペーター・ゴスラールさんは誤解されないようにと開口一番、「再生可能エネルギーへのエネルギー転換を支持している」と強調しました。このグループは高架線ではなく、地中ケーブルを使うよう要求しています。グループの名前は「プロ・エアトカーベル(地中ケーブル支持)」といいます。


地中ケーブルを採用することに関しては、住民側と送電事業者側で意見が大きく食い違っています。送電網整備計画の公聴会で、送電事業者側は高圧線用の地中ケーブルの技術がまだ熟していない、地中ケーブルは高架線の10倍くらいのコストがかかり、採算性がないので無理だとの一点張りでした。頑な送電事業者側の議論に、反対住民側は罵声を浴びせる以外にありません。議論に進展のない泥仕合の話合いが延々と続いていました。


その打開策の一つとして、ドイツ北部のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州では、市民風力発電をしているラインハルト・クリスチャンセンさんらの市民グループが中心になって、新しい高圧線の建設に住民が共同出資して、共同所有にしてはどうかと提案しました。住民が出資して、送電事業の利益の一部を住民に還元する。それによって、送電網建設に対する住民側の反発を和らげるようとする試みでした。


クリスチャンセンさんらの市民グループは、農業以外に何の産業もないドイツ最北端の過疎地域に住み、新しい収入源を得るため、市民が出資する市民風力発電パークを設置してきました。それに伴って送電事業者の変電所の容量が不足してきたことから、送電事業者の変電所の横に市民変電所も建設しました。


市民風力発電パークが増えると、送電網の容量も足りなくなります。でも送電事業者の対応は遅く、発電施設を系統から解列する(切り離す)時間が増えてきました。それに対応するため、市民自らが送電網や配電網を建設してはどうかと考えました。110kVの送電線なら市民の力で何とかなるかもしれません。でも、380kV高圧線の建設には莫大な費用がかかり、市民の力だけでは無理です。送電事業者が建設する高圧線に、市民が共同出資して参加できるよう送電事業者と州政府を説得します。


州政府が、送電網建設への出資を公募します。しかし、出資しようとする住民は集まりません。高圧送電網建設への住民参加を断念せざるを得ませんでした。住民は、高圧線に投資しても高圧線が送電事業者の所有に留まることを敬遠したのでした。住民は投資家として単に企業の高圧線建設に参加するのではなく、住民参加によって住民が共同所有できる市民高圧線を望んでいました。州政府は、住民参加の試みが失敗してはじめて住民の思いに気づくのでした。


(2017年3月20日掲載)

前の項へ←←      →→次の項へ        →目次へ
         このページのトップへ