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2017年3月23日掲載 − 脱原発・自然エネルギー − エネルギー選択宣言 − 3章 夜間、電気を使わないようにする
原子力大国フランスの苦悩

そのいい例が、原子力大国フランスです。


フランスでは、発電全体に占める原子力発電の割合が70%を超えています。オランド大統領は、それを2025年までに50%に低減することを公約にして当選しました。それとて、原子力依存度がとても高いといわなければなりません。ここに、原子力大国フランスの落とし穴があります。


フル稼働を原則とする原子力発電の割合が高いと、それで発電された電力を消費しなければなりません。フランスは電力消費を上げるため、暖房の電気ストーブ化を進めてきました。EU委員会が消費電力の多い電球を段階的に廃止して、省エネ型ランプに切り換えることを提案します。その時、真っ向から反対したのはフランスでした。夜間の消費電力が減ると、余剰電力の消費に困るからです。


日本と違い、ヨーロッパでは電力需要のピークが冬にきます。寒波がくると、フランスでは電気ストープの電力消費が激増します。しかし、フランスの電力供給システムはそれに対応することができません。フル稼働している原子力発電の割合が高いので、電力需要の変動、特に需要が激増すると、その需要を満たすだけの電力がありません。その時フランスは、脱原発を決めた隣国のドイツから電力を輸入します。


ヨーロッパ大陸では、各国間の送電網は連系線でつながっています。いつでも電力を輸出、輸入できます。ただ輸出・輸入といういい方は、あまり適切な表現ではありません。ヨーロッパ大陸では、各国が隣国同士でお互いの都合のいいように電力をいつも融通しているといったほうが正しいと思います。


ドイツでは、北部は南部よりもオランダやポーランドの隣国のほうが地理的に近いのです。電力を南部に送電して国内で消費するよりも、オランダやポーランドなどの隣国に送電するほうが電圧降下を抑えることができます。送電網もそのほうが安定します。


2013年から2015年までのドイツの電力月別輸出・輸入状況を見ると、ドイツではほとんどの月で輸出超過になっています。以下のグラフでは、上の棒グラフが輸入量、下の棒グラフが輸出量を示します。折れ線がその差です。ここでは、月別の総輸入量から総輸出量を差し引いて、物理的な差を出しています。


ドイツは、脱原発を進めています。2011年3月11日前には、原子炉17基が稼働していました。3・11直後に原子炉8基を止め、2015年6月にはさらに1基停止させました。現在ドイツで稼働している原子炉は8基と、3・11前の半分以下になっています。それに代わり、再生可能エネルギーの割合が増えました。グラフを見ればわかるように、ドイツは依然として電力輸出国となっています。


季節毎の状況を見ると、電力需要のピークとなる寒い冬期にドイツの電力輸出量が増えています。それは、フランスへの電力輸出が増えるからだと見られます。


グラフ:2013年から2015年のドイツの電力月別輸出入(単位:100万kWh)
電力輸出入
(出所:ドイツ電事連(BDEW)、2016年4月現在)

日本政府はよく、脱原発を決めたドイツは電力を安定供給できなくなってフランスから電力を輸入していると主張しています。しかしそれは、ほんの一部の事実しか伝えていません。秒単位で細かく見れば、ドイツがフランスから電力を輸入する期間があるのは事実です。ただドイツは、年間を通して電力を輸出しています。ヨーロッパ大陸特有の陸続きという立地条件を有効に利用するため、ドイツ一国だけではなく、大陸全体で各国の安定供給を維持するために隣国同士で都合のいいように電力を融通しているだけの話です。それを、ドイツが脱原発を進めているからフランスから電力を輸入しているとするのは、原発を維持したい日本政府の詭弁にすぎません。


(2017年3月23日掲載)

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