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2017年3月29日掲載 − 脱原発・自然エネルギー − エネルギー選択宣言 − 6章 何を買うかで、エネルギーの利用を選択している
有機食品で意識改革

ドイツ南西部に本社のあるユーヴィ(Juwi)という再生可能エネルギーのゼネコンを取材したことがあります。木をふんだんに使って、低エネルギーハウスとした社屋。社員が生き生きと働いているのがすごく目立ちました。社屋の前には、屋根付きの駐輪場がたくさん並んでいます。屋根には、ソーラーパネルが埋め込まれていました。社用車はすべて電気自動車。駐輪場の角のあちこちに、充電スタンドが立っています。社屋裏は広々とした庭園になっており、バレーボールのコートもありました。


正面入口フロアの奥に、社員食堂があります。社員食堂の前には、「Bio」と書かれていました。社員食堂では、有機食品しか使われていません。ぼくはすごいと思おうとともに、そこまで徹底するとはとちょっと驚きました。でもよく考えると、再生可能エネルギーは地産地消を原則とするのだから、地元で生産して地元で食べることを原則とする有機食品を使っていて当然なのです。


ドイツでは、2000年代はじめにBSE(牛海綿上脳症)が見つかります。当時のシュレーダー政権(社民党と緑の党の連立)は、それを機に農業改革を行います。農業を環境にやさしく、持続可能にする。その改革の枠内で、10年以内に農業の20%を有機農業にするという目標を掲げました。


ドイツでは19世紀中頃、産業化に反発する市民を中心にして生き方を改革する運動が起こります。それと同時に、有機農業もはじまりました。有機栽培された農産物などを専門に販売する小売店レフォルムハウス(Reformhaus、改革店の意)も登場します。


有機食品スーパー
有機食品専門のスーパーマーケット

ドイツには、有機食品に関して長い伝統があったのです。でも有機農業が急速に広がるのは、21世紀に入ってからです。各地に、有機食品だけを販売するスーパーマーケットチェーンがオープンします。これら有機食品店は再生可能エネルギーで発電されたグリーン電力の小売事業者と提携しながら、消費者の購買意識の改革にも努めています。


有機食品はすぐに、食品の安全に敏感な小さな子どもを持つ親たちや環境意識の強い消費者などに愛好されるようになりました。有機食品であることを公的に保証する規格や認証制度、商品に表示する統一マークもできました。


しかし有機食品が普及するとともに、矛盾が出はじめます。地元産の有機食品ではなく、輸入された安い商品が出回ってきました。有機食品を入れるプラスチック容器にも、塩化ビニールやポリスチレンが使われはじめます。これらのプラスチックは環境ホルモンといわれ、生体に影響を与えます。いずれも、安い価格で競争するためでした。


有機食品が輸入品では、地産地消を原則とする有機食品の哲学が失われます。ただ、輸入品なしには需要をカバーできなくなっているのも事実です。国内の農業は工業化され、大量安価生産が主流になっています。工業化された農業が有機農業に移行していけば、需要を満たすだけのポテンシャルがあるはずです。しかし、農作業がたいへんな有機農業に変わろうとする農家はまだまだ少ない。その一方で、原乳を大量生産する酪農家は、大手スーパーマーケットチェーンの価格低下圧力と生産過剰で、経営の成り立たない低価格で原乳を卸さなければならなくなっています。


こうした矛盾を抱える農業においては、消費者側で質のいいものにはお金を出しても買うという意識改革も必要です。農業においても、大量安価生産するのではなく、有機農業で苦労をしても、安全で質のいい農産物をつくろうという意識改革が求められます。


ぼくたち消費者が食料品の購買で意識改革できれば、農業においても意識改革が加速されます。


(2017年3月29日掲載)

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