引当金を他の目的に運用していいかどうかはちょっと横において、ドイツではバランスシート上に引当金が計上されていないといけないことになっている。そうしないと、最終処分や廃炉などに必要なバックエンド資金を確保してあるという保証がなくなるからだ。
ドイツでは、設計段階から廃炉計画概要を出さないといけないし、廃炉のための資金を確保していることが運転を許可する前提条件となっている。廃炉のことを最初の段階から考え、そのための資金を集めていくというのは、原子力法にはっきり規定されている。
ドイツの場合、労働者に経営参加権があって監査役会に労働者の代表も監査役として入る。そこで、労働者側のチェックも入るという構造だ。
ただその分の現金が実際にあるのかというと別問題で、経理上のトリックがいろいろあるのだと思う。実際に現金が必要になって出金しないといけない時に、その時その時に必要なお金があればいい(会社として支払い不能にならなければいい)というのが前提になっていると思う。
電気料金において1kW/h当り引当金分をいくらにしているかは、各社の裁量に任されていて、その実態はよくわからない。
廃炉引当金については毎年廃炉工事費の査定額が更新され、それをベースに徴収額を設定しているはずだ。だが、その額で十分であるとは到底思えない。日本の廃炉査定額をドイツのものと簡単に比べたことがあるが、原子炉当りではなくて、出力当りで概ね10%以上低かった。日本では、その資金がもっと不足する可能性があるということだ。
ただこのコストは特にどの程度除染するかでも違ってくるので、そうなるとそれは、中間貯蔵と最終処分のコストにも影響する。
結局、最終処分や廃炉のコストは、後にそのつけを押し付ける構造になっている。
(2017年11月27日、ふくもと まさお) |