2017年3月26日掲載 − HOME − エネルギー選択宣言一覧 − 4章記事
二酸化炭素はどうなるのか

生物資源は燃料として使っても、石炭のような化石燃料ではありません。生育している植物を資源とするので、「再生可能」なのです。ただ生物資源を発酵させてバイオガスで発電しようが、バイオマスとして燃やして発電しようが、二酸化炭素が排出されます。燃料が再生可能でも、温室効果ガスの二酸化炭素を排出するのにクリーンなグリーン電力といえるのでしょうか。


ここでは、こう解釈します。


ここで使われる生物資源はその直前まで生育していたので、それまで二酸化炭素を吸収してきた。それを燃料として発電して二酸化炭素が排出されても、その前に吸収された二酸化炭素が排出されただけとなる。その二酸化炭素はまた新たに生育する植物によって吸収されるので、化石燃料と違って実際には二酸化炭素はプラスマイナスゼロとなって増えない。


つまり、生態系の循環の中で二酸化炭素の排出と吸収が繰り返される限り、二酸化炭素の排出量は増えないと見ます。これを「カーボンニュートラル」といいます。


前述したパワー・トゥ・ガス(Power to Gas)では、風力で発電された電力を使って水素を製造し、それをさらに二酸化炭素と結合させてメタンガス化します。そこでバイオガス発電によって排出された二酸化炭素を使えば、カーボンニュートラルが維持されます。


同じく生物資源を起源としながらも、石炭や石油などの化石燃料ではどうして二酸化炭素の排出量が増えてしまうのでしょうか。


それは、化石燃料に蓄積された二酸化炭素が現在の生態循環系に留まっている二酸化炭素ではなく、遠い昔に蓄積された二酸化炭素だからです。化石燃料を使えば使うほど、地球にはそれによって排出される二酸化炭素が一方的に増えます。生態系には、その二酸化炭素を吸収する容量がありません。人類は、産業革命後そうやって二酸化炭素を排出してきました。人類はそれによって、凄まじい発展を遂げました。しかし今、地球温暖化の問題を見ると、パンドラの箱を開けてしまったといっても過言ではありません。


化石燃料から排出された二酸化炭素を削減するため、植林して樹木を増やし、二酸化炭素を吸収させることができます。あるいは、化石燃料を燃やして排出されるガスから二酸化炭素を分離、回収してどこかに安全に隔離し、貯蔵して置くこともできます。貯蔵場所としては、水中や地中が考えられています。


世界中で、二酸化炭素を分離、回収して隔離する技術が研究、開発されてきました。しかし、莫大なコストがかかるほか、効率がよくありません。二酸化炭素を安全に貯蔵しておくにも限界があり、二酸化炭素の削減にそれほど効果があるとは見られません。


CO2分離回収設備
シュヴァルツェ・プンペの二酸化炭素分離・回収試験プラント

ドイツでも、そのための技術開発が行なわれてきました。ドイツ南東部シュヴァルツェ・プンペでは、石炭火力発電所の敷地内に二酸化炭素を分離、回収する試験プラントが稼働していました。しかし、二酸化炭素を貯蔵するためのタンクが一杯になり、今はもう稼働していません。


日本には、根強い地球温暖化懐疑論があります。ヨーロッパにも懐疑論を主張する研究者がいますが、ごく少数です。日本の懐疑論現象は世界中でも珍しく、それが脱原発と再生可能エネルギー推進をより複雑にしているように感じます。地球温暖化懐疑論に対しては、しっかりした反論があります。2015年末にまとまったパリ条約を見ても、脱化石燃料がはっきりしています。日本政府は、温暖化対策として原発推進が必要だとしています。しかしそれも、世界ではごく少数派だといわなければなりません。


石炭火力発電と原子力発電の基盤は、大資本、大規模施設です。「エネルギーヴェンデ」とは、それを単に再生可能エネルギーに転換するだけのものではありません。大資本と大規模施設を中心とした産業と社会の構造を改革するものであることも知ってほしいと思います。


(2017年3月26日掲載)

前の項へ←←      →→次の項へ        →目次へ
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ