2015年夏のある暑い日、ぼくは金沢にいました。その時、35度以上もありました。ちょうど、兼六公園の脇の道を歩いている時でした。木がぎっしり詰まった林から、涼しい風がぼくのほおをよぎります。蒸し暑い北陸にも、こんな清々しい風があるのだとうれしく思いました。
深い林の中には、太陽の光が差し込めません。林の中は木陰ばかりで、日向よりも温度が何度も低くなっています。温度の低い林から温度の高い道路に、涼しい風が流れていたのでした。
その数日前、ぼくは京都にいました。京都は暑いのを覚悟していましたが、39度もありました。京都駅を降りた瞬間、するどい日差しが肌を刺します。駅前でタクシーに乗ると、運転手さんと京都の暑さの話になりました。運転手さんは、京都の家は昔から間口が狭く、奥行きが深いのだが、とても風通しがいいように設計されているのだと話してくれました。
日本には、すだれがあり、風鈴もあります。これらは、日本の暑さしのぎの生活の知恵だと思います。
ぼくの暮らしているベルリンでも、夏はかなり暑くなったなあと感じるようになりました。わが家は、6階建て集合住宅の一番上にあります。屋根裏を増築したものです。窓が屋根に組み込まれているので、日光がそのまま部屋に差し込んできます。だから、夏はたいへん暑い。外気が30度ちょっとでも、室内が40度近くになることがあります。でも、クーラーはありません。ベルリンには、クーラーのある住宅はほとんどありません。一流ホテルでも、クーラーのないホテルがあります。それでも、何とか暮らしていけます。
暑い日、わが家では朝早くまだ温度がそれほど上がらないうちに、家中の窓を全部開けて涼しい空気を入れます。その後は、夕方涼しくなるまで窓のカーテンも閉めて窓を閉めたままにします。カーテンは水吹きで濡らすか、濡れたシーツを窓際にかけます。こうして、部屋を冷やします。水が暑さで気化する時にエネルギー(気化熱)が奪われるので、室温が数度下がります。
西向きのベランダは午後から日差しが強く、大きな窓の前にアサガオを植えて「緑のカーテン」にしています。ただアサガオは強い日差しには弱いので、日差しのあまり強くないところに移し替えました。アサガオのあった日差しの強い場所には、今ゴーヤが植えてあります。
いろいろ生活の知恵を絞れば、エネルギーを使って冷房しなくても、暑さに耐える方法が考えつくものです。
(2017年3月27日掲載)
前の項へ←← →→次の項へ →目次へ |