2010年代に入って示されたのが、プラスエネルギーハウスです。プラスエネルギーハウスとは、住宅にソーラーパネルを備え、エネルギー消費を最適に制御して最終的に住宅で消費する以上の電力をソーラーパネルで発電して、公共送電網に余剰電力を供給できるハウスのことをいいます。
現在、35のモデルハウスがドイツ各地に設置されています。
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ベルリンのプラスエネルギーハウス(ハウス西側から撮影) |
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ベルリンに設置されたプラスエネルギーハウスは、「電気自動車の利用を目的としたプラス効率ハウス」といいます。電気自動車も含めて住宅に必要な電気をソーラーパネルで自家発電して消費しても、電力に余剰の出るハウスです。これまで、両親と子ども2人の4人構成の家族が2家族、1年間ずつ試験的に生活しました。
建物自体は、居住試験と展示物として利用した後に解体されるため、地面の上に簡単に設置できる簡易構造物として設計されました。釘などは使わず、解体しやすく、残った部材をリサイクルしやすいようにしています。
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アルゴンガスの入った三重張りガラス板のモデル |
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二階建て住宅で、一階に居間/ダイニングキッチンと機械室、二階に子供部屋、寝室、バス/トイレなどがあります。屋根に単結晶シリコン型ソーラーパネルが設置され、南向きの外壁に薄膜ソーラーパネルがついています。効率の悪い薄膜ソーラーパネルを外壁に使ったのは、外観上の理由からです。
ハウスの東側と西側は、壁一面をガラス張りにして太陽の光を採光しやすくしています。ガラスは全て三重張りで、ガラス板の間の中間層に、断熱効果を高めるため熱を伝えにくいアルゴンガスを入れました。
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壁の断面(イラスト:たなかゆう)
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南北の壁には、古新聞を原料としたセルローズ断熱材が入っています。内装用の化粧板とセルローズ断熱材の間に中間層を設け、電線や配管を壁に埋め込みやすくしました。この中間層には、大麻繊維材が断熱材として入っています。自然素材で徹底的に断熱したハウスという感じでした。
大麻というと、麻薬かとも思われがちです。ただ大麻は、昔から貴重な繊維原料として使われてきました。ドイツでは今も、大麻製のズボンやシャツ、カバンなどが自然素材を利用した衣料品として愛用されています。
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左のボックスに蓄電池が入っている(ハウス北側) |
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照明器具はすべて電力消費の少ないLEDで、天井に埋め込まれています。
おもしろいと思ったのは、住宅用蓄電池としてBMW社ミニクーパーの電気自動車に使われていた中古の蓄電池を使用していたことです。それによって、中古蓄電池の寿命を試験しているということでした。
(2017年3月31日掲載)
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