2017年4月06日掲載 − HOME − エネルギー選択宣言一覧 − 8章記事
自動車メーカーが沈黙しているのは不思議

将来期待される電気自動車や水素自動車、燃料電池車は、二酸化炭素を排出しません。そのゼロエミッションに価値があります。日本の大手自動車メーカーが得意とする技術でもあります。そのクリーンさを実現するためには、単に自動車においてゼロエミッション化するのではなく、それに使用される燃料である電力や水素も再生可能エネルギーで発電ないし製造しないことには意味がありません。そのために化石燃料や原子力で発電された電力を使っていては、ゼロエミッションにはなりません。


スマートグリッドやスマートメーター、スマートハウスなど電力の送電や利用が最適となるように制御する技術も、日本の産業界が得意とする技術です。これらの技術は、電力供給システムをデジタル化し、再生可能エネルギーの発電量に変動が大きいという欠点に対応するのに適した技術でもあります。


これら日本が得意とする技術は、日本産業界のイノベーション力、国際競争力の高さを示します。しかし、このイノベーション力と国際競争力は再生可能エネルギーと結合させてはじめて効果を発揮し、証明されるものです。その技術を国内で再生可能エネルギーとともに実証しないことには、その優秀さを世界に示すことができません。それが、日本経済の将来のためになります。そのためには、日本国内において再生可能エネルギーで発電されたグリーン電力が十分に利用されていなければなりません。それは、日本の自動車業界や電気電子業界にもよくわかっているはずです。


しかし、日本の関連業界はこの点についてはっきりとした態度を表明していません。これは、とてもおかしいと思います。


原子力発電と火力発電に依存する日本の電力業界が、日本経済を牛耳っています。電力業界はこれまで、総括原価方式という絶対に損をしない社会主義計画経済のような方法で、国際競争に曝されることもなく、国内で事業を展開してきました。厳しい国際競争で生き抜いてきた自動車業界や電気電子業界のほうが本来優秀で、発言力があっていいはずです。でも、そうではない日本経済。そこに、日本の経済構造の矛盾とねじれがあります。再生可能エネルギー問題で自動車業界が沈黙しているのは、日本経済の欠陥構造をそのまま反映しています。


世界市場では、各国が競って技術開発を行い、国際競争が激化しています。自動車業界は、世界に対する日本経済の看板産業です。日本経済の将来や自社の将来を考えたら、自動車業界の誇る技術を国内で実証するために、再生可能エネルギーを日本国内で普及させてほしい、そうしないことには国際競争に勝てないとはっきり主張しなければならないはずです。保守派の人たちのことばを借りれば、それが「国益」です。


脱原発をはっきり主張できる新聞は、日本には今、中日新聞/東京新聞しかありません。それは、地元にトヨタという世界最大の自動車メーカーがバックにあるからだと思います。中日新聞/東京新聞は、広告収入で中部電力に依存する必要がありません。中日新聞/東京新聞に反原発を代弁させるだけではなく、世界のトヨタには、正々堂々と正面から原発を使っていては日本の自動車業界、日本経済のためにならないとはっきりいってほしいと思います。


(2017年4月06日掲載)

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