2013年9月4日掲載 − HOME − 放射線防護 − 記事
汚染水流出は人災だ

現在日本で大きな問題になっている福島第一原発での汚染水の流出問題について、9月3日の南ドイツ新聞電子版がドイツの専門家を取材して、汚染水流出問題について記事にしている。


取材しているのは、ドイツの原子力関連公的機関GRSの元社長などで、記事の内容をまとめると、次のような問題を指摘している。


タンクの構造上の問題:

タンクは、鉄板を溶接するのではなく、リベット打ちして造ったものをゴムのガスケットでつなぎ合わせてタンクにしたもので、この構造ではいずれ水が漏れるのは当然。


筆者は多少技術のことがわかるが、溶接タイプを使っていないのはちょっと信じられない。


監視のずさんさ:

タンクに、水位を測るレベル計が設置されていなかったこともわかっている。


また、タンクの下には受け皿があって、そこから排水できるようになっているが、受け皿に設置された排水用の絞り弁が封印されていないか、開閉が全く記録されていない。


1800マイクロシーベルト/時の高い線量率が測定されているということは、汚染水が漏れてタンク周辺で濃縮した可能性が高い。


ということは、長い間に渡って漏れがあったということで、これまで長い間に渡って全く監視されていなかったことになる。


ドイツの専門家は、作業員は防護服を着ているが、防護服で汚染が濃縮して高線量で被曝する心配もあるとしている。


新浄化装置ALPSの問題:

汚染水からさらに新しい多核種除去設備ALPSで放射性物質を除去することが計画されている。しかし、その設備にも漏れが確認されている。こちらは、溶接線での漏れが原因だ。


ドイツの専門家によると、汚染水にはおそらくセシウムはもうそれほどないだろうという。問題は、トリチウムとストロンチウム。


ただ、ALPSではトリチウムは除去できない。


さらに、ALPSの一日の処理量が500立方メートル。この処理量は毎日新たに発生する汚染水をわずかに上回るだけなので、これでは現場にある多量の汚染水を処理することができない。


こうして見ると、現在起こっている汚染水の流出は人災としかいえない。


こうした状況から、ドイツの専門家は、最終的には汚染水は薄めて太平洋に流すしか手がなくなるのではないかと恐れている。


なお、福島第一原発に行く予定だったドイツのある専門家は、現場訪問を取りやめたという。


(2013年9月4日、おすと   えいゆ)
記事一覧へ
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ