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2013年7月1日掲載 − 放射能汚染
食品の汚染測定値はどう読むのか

いくら食品の放射能汚染に関して情報が公開されても、食品汚染を示す測定値のことが理解できなければ意味がありません。そこで以下に、食品放射能汚染の測定値に関して注意すべき事柄について述べておきます。


・測定器

測定に使用された測定器の記述がなければなりません。それがない場合、その測定値は信頼できません。


次に、測定器の検出限界(測定下限値となっていることもある)に注意します。これは、測定器が検出できる放射能濃度の最低値を示します。食品の汚染濃度が検出限界未満であると、測定値には「不検出」や「検出せず」、「ND」などとしか記述されません。これは食品が「汚染されていない」ということではなく、「測定器で測定できるよりも汚染が低い」という意味です。


ぼくは、測定器の検出限界は1ベクレル/kgが理想と考えています。しかし、それは高価なゲルマニウム半導体検出器がないことにはそこまでは測定できません。それが無理でも、検出限界がセシウム134とセシウム137でそれぞれ5ベクレル/kgの測定器がほしいところです。食品の汚染濃度が低い値まで表示されれば、市民にとって汚染を判断する幅が広がり、安心しやすいと思います。特に子どもの食べる食品については、低位の汚染濃度まで知って買う買わないを判断したいと思います。


学校給食においても、食品の汚染測定結果が公表されるようになってきました。しかし使用されている測定器の検出限界が10ベクレル/kgや20ベクレル/kg、40ベクレル/kg とあっては、簡易測定しか実施されていません。学校給食で使用される食品の汚染濃度が公開されても測定器の検出限界が高いので「不検出」や「検出せず」としか表示されていないようでは、何のための測定かわかりません。それでは建前だけのアリバイ測定でしかなく、情報隠蔽とほとんど換わりません。


・測定方法

測定時間に関する記述があるかどうかを見ます。測定時間が数分程度と短い場合は、簡易測定しか行われていません。簡易測定器では測定結果に天然放射性核種のカリウム40の量が含まれるので、計算でカリウム40の量を差し引かなければなりません。食品の検体の量が少ない場合、体積を計算で補正して測定結果を出す場合もあります。最終の測定結果が計算で補正されている場合は、その説明がなければなりません。


通常は、測定時間が長ければ長いほどより正確な値が出ます。測定に必要な検体の量が多ければ多いほど必要な測定時間は短くなります。


・測定値と放射性核種

市民測定で測定できるのは、ガンマ線を放出する放射性核種だけです。測定値は、放射性セシウム(セシウム134とセシウム137の合算値)の値だけが表示される場合、セシウム134とセシウム137の値が別々に表示される場合があります。


日本の新しい食品汚染規制は半減期が1年以上の放射性核種全体を規制対象としていますが、実際に数値として規定されているのは放射性セシウムの値だけです。手元にある測定値が放射性セシウムの値ではないと、政府の規制値と比較することができません。セシウム134とセシウム137が別々に表示されている場合は、その合計値が放射性セシウムの値です。セシウム137の値だけしか表示されていない場合は、その値を倍にして規制値と比較すれば、だいたいの目安になると思います。


簡易測定器で測定した測定値によっては、前述したように補正しないまま放射性セシウムの値の中に天然のカリウム40の値が含まれたままになっている場合があります。その場合、測定結果は実際の放射性セシウムの値よりも高い値を示しています。食品によってカリウム40の値が違いますので、どれだけの値を差し引けばいいとは一概にはいえません。


ヨウ素131については半減期が約8日と短いので、新たに臨界するなど大きな事故が発生しない限り、ヨウ素131はもう検出されません。


・測定の不確かさ

食品の検体を何回測定しても、同じ測定値は得られません。測定毎にその結果が異なります。その不確かさを示すために「100±20ベクレル/kg」のように表示します。100が測定した結果の中央値で、20が不確かさの幅を示します。中央値とは80(100マイナス20)と120(100プラス20)の間のちょうど真ん中の値ということです。これを「代表値」としていることも多いようですが、そうなると平均値なのか中央値なのかはっきりしません。通常は、測定時間が長くなればなるほど不確かさの値がより正確になります。しかしどんなに長く測定しようと、どんぴしゃりの真の値は得られません。測定値は測定の不確かさにおける中央値を意味するにすぎません。この不確かさのことを「測定誤差」と表現する場合も多く見られますが、誤差とは正しい真の値との違いを示すものなので、この表現は正しくありません。


「30±30ベクレル/kg」のように測定結果に測定値と不確かさが同じ値で表示されている場合は、汚染が正しく検出されていない可能性があります。こういう測定結果が出た場合、測定者が注意しなければならないのですが、測定結果が間違ったまま公表されることも十分考えられます。万一こういう結果を見つけた場合は、測定所にそれを指摘してください。


さらに、「<8ベクレル/kg」と上限値だけが表示される場合もあります。これは、測定した食品中に放射性核種が含まれていないだろうが、測定値には不確かさがあるので、万一放射性核種が含まれているとしても汚染濃度はそれを超えることはないだろうとして、その上限値を計算で出して表示されたものです。


測定結果を測定(中央)値だけで表示するか、測定の不確かさを付けて表示するかは、測定所それぞれが決めることだと思います。一般市民には難しいので、測定の不確かさもわかっているが測定(中央)値しか表示しないという考え方があります。測定結果すべてをオープンにするため、不確かさも一緒に公表したほうがいいという考え方もあります。なお、測定値を計算で補正している場合は測定値だけしか表示されません。


測定値の表示方法がいろいろあるので、戸惑ってしまうかもしれません。しかし、難しいことではありません。ぼくは、市民が食品汚染に関して自分の目安を持っているのがいいと書きました。測定値の表示の仕方に応じて自分の目安とどう比較するか、自分のスタンスを先に決めておけばいいだけのことだと思います。特に測定値に不確かさが表示されている時に、不確かさを無視して測定(中央)値だけで比較するのか、測定値から不確かさを引いた値で比較するのかなど、自分であらかじめどうするのかを決めておけば戸惑わないと思います。


(2013年7月1日、おすと   えいゆ)
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