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世界遺産か、民主主義か
(2007年3月13日)

ザクセン州の上級行政裁判所は13日、エルベ河に計画されている新しい橋の建設を実施するよう求める判決を下した。それにより、世界遺産に登録されているドレスデンを含むエルベ河畔の美しい景観が、世界遺産の登録を抹消される可能性が高まった。


バロック様式の古都ドレスデンを含むエルベ河畔は、2004年7月にユネスコの世界遺産に登録された。だが、新しい橋の建設計画があることから、2006年7月に危機遺産に指定されていた。


エルベ河に計画されている新しい橋の建設については、2005年2月に行われた橋の建設を問う住民投票で、ドレスデン市民の約68%が橋の建設に賛成。ただその後に、橋の建設が世界遺産として問題となることが発覚し、市議会が橋の建設開始の延期を決議していた。だが、市当局が住民から建設実施の委託を得ているとして、建設の実現に固執したことから、世界遺産と橋の建設を巡る問題は裁判の場で争われることになった。


今回の上級審の判決は、建設工事の発注を差し止める判決を出した下級審の判決を覆すものだが、ここでは、住民投票という民主主義上の手続きを踏んだ結果を世界遺産としての価値より上位に置いた点が注目される。


ただ、住民投票が行われた時点では、世界遺産の登録が抹消される可能性が問題にされていなかっただけに、そうした状況で行われた住民投票が、危機遺産に指定された後も、拘束力があるのかどうかも疑問となる。


(2007年3月13日)
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