ドイツは現在、3ヶ月半のシロクマの赤ちゃん「クヌート」にメロメロ状態だが、クヌートは、カナダ生まれのトスカを母に、ミュンヒェン生まれのラルスを父に持つ。
ただ母のトスカは、86年に東ドイツに連れてこられた。当時はまだ7ヶ月だった。そして、シロクマの調教師ウルズラ・ベッチャーさんによって調教され、サーカスの舞台で活躍していた。
しかし、東西ドイツ統一によって、東ドイツ時代には重要な文化機関であったサーカスはやっていけなくなる。サーカスのオフシーズンになると、動物たちは狭い檻の中に閉じ込められる状態が続いていた。
最終的に、東ドイツのサーカスは解体され、トスカは99年に西ベルリンの動物園に引き取られた。つまり、東西ドイツの統一がなければ、クヌートは生まれていなかったのだ。
当時、調教師のベッチャーさんは、サーカスで育ったシロクマを動物園に渡すのに反対したという。まったく環境の異なる場所に置かれることになるからだ。
シロクマは猛獣の中でも、最も調教しにくい動物といわれ、シロクマの調教師は世界でもたいへん珍しい存在だった。だから、ベッチャーさんは東ドイツ時代においても、世界のサーカス界の花形的存在だった。そのベッチャーさんもまもなく80歳となる。
クヌートはベッチャーさんにとって孫のようなもの。でも、ベッチャーさんはクヌートのことについては語りたがらない。
(2007年3月24日) |