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学習到達度調査で、東部ドイツ州の成績が躍進
(2008年11月18日)

地方分権化の進んでいるドイツでは、教育は各州の管轄で行われ、州の間で教育制度、カリキュラムが異なっている。


州毎に異なる教育方法を比較して改善するため、ドイツは2006年に行われたOECD生徒の学習到達度調査(PISA、15歳の生徒を対象)直後に、調査対象とする学校、生徒を拡大して、独自に国内調査を行っていた。


その州比較が18日、発表された。


その結果によると、科学、数学、読解力の3つの分野すべてにおいて、東部ドイツのザクセン州が最高の成績をあげた。


3つの分野で成績が一番悪かったのは、いずれも西部ドイツのブレーメン市とハンブルク市(いずれも州扱い)。


今回の調査結果で顕著となったのは、ベルリンを除く5つの東部ドイツ州の成績が、他州に比べて、大きく伸びていること。


東部ドイツ州では、統一後に大幅な教育改革を余儀なくされ、その成果が着実に実ってきているといえる。


東部ドイツ州では現在、生徒が5年生ないし6年生の時に、成績に応じてギムナジウム(大学進学コース)、実業中等学校、本課程学校の3つの学校に振分けられる伝統的な西ドイツの教育制度が、一切採用されていない。


すべての州で、ギムナジウムと中等学校(ただし、州によって名称、制度が異なる)の2学校制となっており、西ドイツの3学校制と異なり、成績が伸びると、ギムナジウムに転校することもできるようになっている。


統一直後、一部の州が西ドイツの教育制度を採用したが、2学校制に変更した。


これは、旧東独時代の教育制度が、10年生まで生徒が一緒に一般教育を受ける教育方法だったことにもよるが、住民が西側に移住したことによって生徒数が減少し、生徒を3つの学校に振分けるほど十分にいなかったからだともいわれる。


1クラスの生徒数も少なく、旧東独時代からの伝統で、自然科学の授業時間数が多いという特徴もある。


たとえば、一番いい成績を残したザクセン州では、自然科学関連の全体の授業時間は平均26時間。 特に、数学、情報工学、自然科学、技術に重点が置かれ、高学年では物理、化学、生物が必修科目となっている。


また、一部の先生や父兄のイニシアチブでできた「地域学校」というプロジェクトでは、学年に関係なく、生徒が一緒に勉強し、一人一人の生徒の能力に合わせた緻密な教育が行われている。


ドイツでは現在、早期振分けを原則とする伝統的な3学校制が適切なのかどうか、盛んに議論されているところ。


ただ、バイエルン州など伝統的な学校制度で好成績をあげている州があることから、保守政権となっている州は、3学校制の改革には反対の立場だ。


しかし、大都市では本課程学校に問題児が多く、落ちこぼれ校のレッテルを貼られがち。そのため、生徒が益々修業意欲をなくしているケースも見られる。


そうしたことから、ベルリン市などでは、本課程学校をなくして、実業中等学校と本課程学校の生徒が一緒に勉強できる新しい枠組み造りが行われている。


(2008年11月18日)
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