2018年7月掲載 − 小さな革命 − J・Oのベルリン便り
アッハソー、1997年4月

ドイツでスポーツといえばサッカーだろうが、これが以外と肩身の狭い思いをしなければならない。サッカー・ファンとでもいおうものなら、おまえはインテリではない、Arbeiter(労働者)だと決めつけられる。ドイツ語のArbeiterは労働者と訳せても、ブルーカラーの意。これはれっきとした差別だ。しかし、小生はありがたいことにインテリではないので、堂々としたサッカー・ファンである。ただ、もう老体に鞭打ってからだを動かすことはできないので、見るほうだけだ。


サッカー・ファンに対する偏見は女性に多いようだが、やはりファンの側にも責任がある。スタジアムでの騒ぎ方、荒れ方はかなりのもの。実際にスタジアムに入ってしまうと、それほど感じないのだが、傍から見て怖く感じるのは仕方がない。


ベルリンでは毎年6月にドイツ・カップ(プロ、アマチュアによるトーナメント試合)の決勝が行われるが、当日はいつもたいへんな大騒ぎ。クーダムなど街の中心は朝からサッカー・ファンでいっぱい。ひいきにするチームのTシャツや帽子、マフラーを付けたファンが街のあちこちでたむろして騒いでいる。顔をチームの色で塗りたくっているファンもいる。だいたいがグループ行動で、缶ビールは必需品らしい。ゲームが終わると、街はシーンと急に気が抜けたかのように静かになる。しかし、後がたいへんだ。街中、ごみが山のように散乱したままとなっている。


おっといけない。今月はこういうことを書こうとしたのではない。ドイツのサッカーにたいへんなことが起こったのだ。今年のドイツ・カップの決勝にアマチュアチームが進出してしまったのである。その名は”エネルギー・コットブス”。エネルギーとはなんと懐かしい名前だろう。旧東独時代のサッカー・チームの香りをいまだに残している。コットブスは現在3部リーグ(2部までがプロ)のひとつである北東地方リーグのトップを走っており、現在55試合負け知らず。ドイツ・カップでもすでに1部のブンデスリーガ3チームを打ち負かして決勝まで上がってきた。圧巻だったのは準決勝。相手はブンデスリーガのトップ・チームのひとつカールスルーエ。ドイツ・ナショナルチームに3人の選手を送り出すプロのトップ・チームに3:0で貫祿勝ち。カールスルーヘの選手をして、相手が2クラス上だったといわせてしまった。


旧東独のチームとしては、ハンザ・ロストックがブンデスリーガに入っているが、現在下から4位と、2部に降格する、しないの瀬戸際に立たされている(下位3チームが2部に降格。小生の予想ではおそらく大丈夫)。選手としては96年のヨーロッパ最優秀選手に選ばれたザムマーなど、旧東独出身の選手も活躍しているが、チームとなると、資金難から、若い選手を育てても、お金のあるチームに優秀な選手を引き抜かれてなかなか上位に進出できない。それが、今年はコットブスがたいへんなことをやってのけた。


コットブス地区は露天堀炭鉱の盛んなところだが、統一後に閉鎖されたりと、20%近くの失業率を抱え、統一の憂き目を味わっている。エネルギー・コットブスは統一の鬱憤をはらすかのようにコットブス地区だけでなく、旧東独全体の期待を一身に背負って今度は6月の決勝で現在ブンデスリーガでトップ争いを演じるシュツットガルトに挑戦する。


頑張れ、コットブス!(J・O)


(1997年4月1日)
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