2020年12月29日掲載 − ぶらぼー!
ベートーヴェンの音楽には古楽器が似合う

今年2020年は、作曲家ベートーヴェンが生まれて250年となる記念の年だった。ベートーヴェンが生まれたのは1770年12月16日頃とされ、洗礼を受けたのが12月17日だった。


しかしコロナ禍で、事前に計画されていたイベントはほとんど予定通りには実現できなかった。洗礼250年となる2020年12月17日に、生地ボンのオペラハウスで行われた生誕250年記念コンサートも、聴衆を入れず、テレビでライブ放送された。


演奏したウエスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラも、弦楽器演奏者が十分に距離をとって演奏できないので、マスクを着用しての演奏だった。演奏されたのは、ピアノ協奏曲第3番と交響曲第5番「運命」。ソリストと指揮者は、オーケストラの共同設立者ダニエル・バレンボイムだった。


いくらベートーヴェン生誕記念といえども、どうしてベートーヴェンのことをバッロックオペラの項で取り上げるのかと、不思議に思う方もいるに違いない。


ベートーヴェンというと、ぼくには何度となく引用され、伝説的にまで語られたこともあるインタビュー記事がある。これは、当時日本の読響の常任指揮者だったゲルト・アルブレヒトをベルリンの自宅でインタビューしたものだった。


その記事(「指揮者アルブレヒト、ベートーヴェンについて語る」)を読んでもらうと、なぜベートーヴェンとバロック音楽が関係あるのか、わかると思う。


ベートーヴェンを演奏するには、バロック音楽で使われる古楽器がいいのだ。ベートーヴェンの音楽の激情を表現するには、むしろ古楽器でなければならない。そのほうが、ベートーヴェンのテンポの速さやダイナミックさに合う。ベートーヴェンの音楽には、古楽器が似合うのだ。


ぼくがアルブレヒトにインタビューとした時、ぼくはすでにベートーヴェンはバロック風に速く、強弱をはっきりと演奏したほうがいいと理解していた。そのため、アルブレヒトがベートーヴェンは古楽器で演奏するものだといったことには、驚かなかった。むしろ、意気投合した。


ぼくは90年代に、すでにアーノンクールの指揮するベートーヴェンを何度となく聞いていた。それで、これだと思っていた。


アーノンクールはご存知のように、バロック音楽のスペシャリスト。古楽器を使わなくても、オーケストラにはバッロック風の演奏法を徹底させた。音が粘っこくない。角張っている。パンパンと跳ね返ってくるような音だ。


高齢な聴衆が聞くと卒倒してしまうのではないかと思うほど、ベートーヴェンの音楽がダイナミックだった。


当時は、それがとてもセンセーショナルだった。でもアーノンクールも、アルブレヒトもいなくなった今、またロマンチックなベートーヴェンに戻ろうとしているようにも感じる。そう思うと、ちょっと寂しい。


ああ、そうだ。


バロックの巨匠ヤコブスが2019年にベルリンで、古楽器専門のバッロクオーケストラとともに、ベートーヴェンの〈ミサ・ソレムニス〉を指揮している。残念なことに、ぼくは聞き逃してしまった。


ヤコブスにはまたいつか、ベートーヴェンを指揮してもらいたい。


(2020年12月29日)
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関連サイト:
ベートーヴェン生誕250年公式サイト
2020年12月17日のベートーヴェン生誕250年記念コンサート録画
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