2019年3月11日掲載 − ブラボー!
バロックオペラがおもしろい

2017年は、作曲家モンテヴェルディ生誕450年の年だった。日本でも、モンテヴェルディのオペラ作品が上演されたと思う。ただモンテヴェルディのオペラも含め、バロックオペラは日本ではまだまだ未知の世界だと思う。


オペラという形となった最初の作品の一つともいわれるのが、ペーリの「エウリディーチェ」。1600年に初演された。日本では、ちょうど関ヶ原の戦いがあった時。それから、江戸時代がはじまる。


この作品、ぼくはピアノ伴奏で聞いたことがある。主役のアリアが中心の作品。人との絡みがまだ少なく、まだまだオペラのドラマ性に欠けていると思った。モンテヴェルディにしても、1607年に初演された「オルフェオ」では、その後の「ウリッセの帰郷」(1640-41年初演)や「ポッペアの戴冠」(1642-43年初演)に比べると、オペラのドラマ性に欠けていると思う。


モンテヴェルディは、最後のオペラ作品「ポッペアの戴冠」において、オペラの形を完成させたともいわれる。モンテヴェルディはその時、75歳。亡くなる1年前だ。モンテヴェルディは日本の伊達政宗と同じ年の生まれだが、伊達正宗よりも8年長く生きた。


今でこそ、75歳はそれほど高齢だとは思わない。でも当時としては、破格の長寿だったといっていい。そのモンテヴェルディ最後のオペラ作品となった「ポッペアの戴冠」。アリアのメロディが美しいだけではない。精神的に、人間の達することのできるこの上ない崇高な高さにまで達しているといってもいい。アリアの一部をモンテヴェルディの弟子たちが作曲しているが、モンテヴェルディの心は、すでに天国にでもいっていたかのようだ。


バロックオペラの話の内容は、主に神話に由来している。話の筋は単純だ。神話の中の神は、神といえども人間そのものだ。恋愛感情や嫉妬、憎しみなど、あからさまな人の感情を持ち合わせている。登場人物たちは、その感情に素直に行動する。はじらいやためらいはない。純粋そのものなのだ。


現代人は今、その純粋さを失ってしまってはいないだろうか。


モンテヴェルディの「ポッペアの戴冠」は、ポッペアが夫を捨てて、皇帝ネローネ(ネロ)の皇妃になる話。そこには、ポッペアの権力欲があったかもしれない。


でもモンテヴェルディは、感情のままに行動するポッペアを描いたにすぎない。そこには、モラルの良し悪しもない。それが、この作品のすごいところでもある。


バロックオペラには、モラルも、社会の掟もない。人間本来のありのままの姿があるだけだ。それが新鮮で、おもしろい。


(2019年3月11日)
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