2020年2月10日掲載 − ぶらぼー!
カウンターテノールはバロックオペラに不可欠

バロックオペラでなくてはならないのは、カウンターテノールだ。カウンターテナーともいわれる。


カウンターテノールは、声変わりした成人の男性が裏声や頭声で、女声の持つ高い音域を歌う。音域によっては、女声パートのアルトからメゾソプラノ、ソプラノまで可能だ。


バロック音楽時代、カストラートという男性歌手がいた。これは、男性が声変わりする前に去勢して男性ホルモンの分泌を抑え、成人になっても高音域の声を出せるようにした歌手のこと。


教会の少年合唱団が世界的に有名になっている。たとえば、前回取り上げたテノール歌手ペーター・シュライアーは少年時代、ドレスデン聖十字架教会合唱団にいた。


なぜ、教会の聖歌隊は少年合唱団だったのか。


それは、中世のヨーロッパにおいて女性が教会ではしゃべってはならなかったからだ。声も出してはいけない。そのため、声変わりのしていない、高音域まで歌える少年が合唱団員となった。


最初は、少年がボーイソプラノとしてソプラノとアルトのパートを受け持った。でも、表現力に問題あり、パンチもない。次第に、アルトは男性が裏声で歌うようになった。


その後に出てきたのが、カストラートだ。カストラートが女声パートを受け持つようになる。


カウンターテノールとカストラートには、こうした社会的、歴史的な背景がある。


しかし、カストラートの時代は長続きしない。女性の歌手が登場してきたからだ。現代では、モラルと平等が問われ、カストラートは不可能だ。


でも、バロックオペラではカウンターテノールがなくてはならない。作曲家が女声パートを男性が受け持つよう指示している場合もある。指揮者と演出家で、女声パートをカウンターテノールに代えることもある。


たとえばモンテヴェルディ〈ポッペアの戴冠〉のポッペアの乳母アルナルタは、男性歌手が歌うこともあれば、女声歌手が歌うこともある。


ただ裏声で歌うカウンターテノールには、どこか無理がある。のどに不自然な負担がかかっているからだ。高い音域が出なかったり、綺麗でないこともある。初期はとても綺麗な声をしていても、次第に声に透明感がなくなり、パワーもなくなっていく。


歌手として、寿命が短いといわなければならない。


でも、カウンターテノールの響きはバロックオペラの響きを象徴している。カウンターテノールなくして、バロックオペラはない。


(2020年2月10日)
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