2019年8月26日掲載 − ブラボー!
壁崩壊とベートーヴェン第九

2019年8月24日、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(ベルリン・フィル)がベルリンのブランデンブルク門前において、野外コンサートを行った。演奏されたのは、ベートーヴェンの交響曲第9番。


指揮は、首席指揮者/芸術監督に就任したばかりのキリル・ペトレンコ。就任お披露目公演だったともいえる。


会場には約3万5000人と、たくさんの人が集まった。


ベルリン・フィルがこの種の野外コンサートを行うのは珍しい。だがこの野外コンサートには、2つのポイントがあったと思う。


その一つが、今年11月9日でベルリンの壁が崩壊して30年になることだ。


ベルリンのブランデンブルク門は、ベルリンの壁崩壊の象徴だ。冷戦終結と平和のシンボルでもある。


ベルリン・フィルは、そのブランデンブルク門から歩いて15分ほど離れたフィルハーモニーホールを拠点としている。壁崩壊3日後の1989年11月12日、フィルハーモニーホールでは、東ドイツ市民を招待してコンサートが開かれた。


この時、ピアニストで指揮者のダニエル・バレンボイムの指揮と演奏で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番と交響曲第7番が演奏された。


ただ、壁の崩壊とベートーヴェンの第九を結びつけたのは、米国人指揮者レナード・バーンスタインだった。バーンスタインは1989年のクリスマスに、西ドイツのバイエルン放送交響楽団に加えて世界各地から最高級のオーケストラの首席演奏家を招待。西ベルリンと東ベルリンにおいて、ベートーヴェンの第九を演奏した。


この時バーンスタインは、第4楽章の主題「歓喜(Freude)の歌」の歌詞にある「フロイデ(Freude)」ということばを「フライハイト(Freiheit)」に書き換えて演奏した。「フライハイト(Freiheit)」とは、「自由」ということだ。


それが、壁崩壊とベートーヴェンの第九を結びつけるきっかけになったといってもいい。


翌1990年7月、壁のあったポツダム広場近くの敷地内においては、指揮者のロリン・マゼールが東西ベルリンのオーケストラと合唱団13団体の楽団員を集めて、マーラーの交響曲第2番『復活』を演奏している。


でもベルリンの壁崩壊というと、どうしてもベートーヴェンの第九が結びつく。


ベルリン市は壁崩壊30年に向け、11月9日の4週間前からいろいろな公式イベントを企画している。ベルリン・フィルの今回の第九の演奏は、その前座を飾るようなもの。でも場所からしても、壁崩壊30年を記念するにふさわしいコンサートだったといえる。


(2019年8月26日)
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