2019年8月26日掲載 − ブラボー!
みんなのためのクラシック音楽

2019年8月24日にベルリンのブランデンブルク門前において、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(ベルリン・フィル)が行った野外コンサートには、もう一つ大きな意味があった。


会場には約3万5000人とたくさんの人が集まったが、入場は無料。誰にでも、コンサートを体験することができた。


ベルリンには、クラシック音楽を専門とするプロの音楽機関がたくさんある。オーケストラはベルリン・フィルのほか、コンツェルトハウスオーケストラ。さらに、放送響が2つある。また、オペラハウスが3つ。それに加えて、バロック音楽専門の室内オーケストラと現代音楽を専門とする室内オーケストラもある。


これらの機関は大なり小なりベルリン市によって補助され、その年間予算は総額約5000万ユーロ(約65億円に相当)にのぼる。


クラシック音楽をこれほど公的に支援しているところは、世界にあるだろうか。ベルリン以外にないと思う。


ベルリンのコンサートやオペラ公演のチケット代は、日本での公演のチケット代に比べると格段に安い。公演をいくつも聞くなら、日本からベルリンにきて宿泊しながらベルリンで公演に通ったほうが、日本で公演を聞くより安く上がるといわれる。


それでも、ベルリンのコンサートやオペラ公演はここ20年、30年の間にかなり高くなってしまった。地元市民にとって、クラシック音楽はぜいたくなものになってしまったのだ。


となると、莫大な税金を使ってぜいたくなクラシック音楽を補助するのは、正当かと政治的な問題となる。一部のクラシックファンのためだけに、税金を使うのは不公平だ。


この批判を避けるため、オーケストラやオペラハウスは市民密着型の企画をいろいろ行うようになった。


たとえば、青少年や若者向けの教育プログラムを行ったり、リハーサルを公開するなどだ。公演後に、演奏家と交流できるようにラウンジを設けているオーケストラもある。オペラハウスでは、リハーサルにおいて歌手と一緒に演技できるプログラムもある。


さらにここ数年前から、「みんなのためのクラシック音楽」として無料コンサートが行なわれている。ベルリン国立オペラは年1回、オペラハウス横の広場に設置したスクリーンでオペラ公演を見れるように野外イベントを企画している。その即日は、オペラハウスのオーケストラによる野外コンサートだ。そのために、周辺道路も閉鎖されるビックイベントだ。


ベルリン・フィルは、毎週1回入口ホールで無料の室内楽ランチコンサートを開催している。いつも超満員で、たいへんな人気だ。


ベルリン・フィルの場合、今回のようなオーケストラによる無料の野外コンサートははじめてのこと。でもこれも「みんなのため」を意識して行われたものだ。


こうした試みは、単に公平性のためだけではない。


客層が高齢化しているクラシック音楽を、次の世代にどう継承していくのか。そのための試みでもある。クラシック音楽を市民の生活の一部とするための地道な試みであるといってもいい。


それは、クラシック音楽機関を持続的に存続させるためにも必要なのだ。


(2019年8月26日)
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