2024年3月19日更新 − HOME − ベルリン@対話工房の本 − 歴史 − きみたちには。。。 − 著者から
きみたちには、起こってしまったことに責任はない   でもそれが、もう繰り返されないことには責任があるからね

なぜこの本を書いたのか。その背景と思いは?

そうですね。やはり、自分だけが残されていくという思いはありますね。広場のことを知っているのは自分しかいませんので、まだ自分でできるうちに亡くなられた方々の功績を残しておきたいという思いがありました。


ぼく自身、ドイツのドレスデン空襲体験者の方たちともドイツで長く付き合っています。その交流を通して、戦争の過去を継承していく問題についていろいろ考えさせられてきました。ドレスデンの空襲体験者が特に和解を求めて、ナチスが空爆や虐殺した町の体験者との交流や、若い世代に空襲体験を話す対話イベンドにはとても影響を受けています。


ぼくには、現在のグローバル化/金融危機/右傾化の流れが、戦前の植民地主義/金融恐慌/戦争への流れと似ているように思えてなりません。今、世界全体が1930年代とよく似た状況になっていると思います。そういう状況で、40年代へと流れないようにするには、同時代人としてどうあるべきなのか。


戦争を経験していない世代が中心になった現在、戦争の怖さを知りません。平和しか知りません。その中で、市民一人として何ができるのか。それについて考えるのが、とても大切になっていると思います。


ベルリンに設置された慰安婦少女像の問題はご存知だと思います。ぼくは、その時日本人有志とともに少女像を残すよう区長に嘆願する公開書簡を出した呼びかけ人の一人になりました。


その時も、日本大使館、日本外務省、日本の大学教授、もちろん右翼系団体から、区長には長くてすごい内容の手紙が届いていました。でもそれは、逆効果だったのです。


ドイツの人たちには、それが歴史修正主義でしかないことがすぐにわかります。でもそうしている日本人の方たちにはそれがまったく見えていません。こちらの新聞には、「(日本が)墓穴を掘った」と見出しをつけているものもありました。


コロナ禍における日本社会の反応を見ても、感染者に対するパッシングや、医療関係者を親にもつ子どもに対するいじめなど、こちらにいると信じられない反応がたくさん起こっています。


それは一つに、自分が被害者になるという被害者意識しかないからだと思えてなりません。そういう被害者意識があるのは、日本が戦争についてその責任問題をはっきりさせずに、戦後処理をしていない結果だと思います。


コロナワクチンを見てもわかりますが、技術的にも日本は世界から取り残されてしまっています。日本では国益ということばをよく聞きますが、今日本のやっていることは、ドイツから見ていますと、国益に反するどころか、世界から取り残されていくだけにしか見えません。


こうした日本の状況を見るにつけ、政治的に発言するよりも、ボトムアップを刺激するようなことをするほうがいいのではないかと思っています。そのために、できるだけ若い人たちと対話するよう心がけています。


今はコロナ禍で無理ですが、毎年夏に福島県高校生がドイツにくるプロジェクトに関わってきました。高校生さんたちには、こちらの高校で授業体験もしてもらいます。


それによって日本の高校生さんたちは、いかにドイツの高校生に比べて、日本の高校生が自分の意見を持っていないのか、日本の戦争の歴史について知らないのか、あるいは気候変動や原発の問題について関心がないのか、痛感して帰ります。


またドイツでは授業が詰め込みではなく、考えさせる授業を行っています。授業において生徒さんたちが自分の意見をいわないと、いい成績をもらえません。それを体験して、日本の高校生たちはびっくりします。


2週間ほどのドイツ滞在ですが、その間の高校生の変化、成長ぶりはすごいですよ。帰国後、親まで変わったということも聞いたことがあります。


こうした地道な積み重ねが今、必要だと思っています。


ただこちらにいて、広島と長崎、さらには最近では福島の問題に関して、こちらの人たちの対応に正直いってかなり違和感を持っています。特に、政治的に活動している活動家のような人たちにですね。


それはなぜかというと、自分たちの政治活動を正当化する種として広島や長崎、福島の問題を利用していないかと思うことがよくあるからです。その辺は、広場に記念碑をつくる時も感じました。


でも日本では、目が外ばかりに向いていないだろうかと思います。そこには、国外の人たちと連携するために国外にメッセージを送って、支援してもらおうという気持ちがありますね。


でも、それぞれの国、それぞれの場所には土地柄や政治風土、独自の考え方があります。日本からのメッセージがどう届き、どう解釈されるのか。それも問題です。でも日本では、発信することが大切とされ、そこまでは十分には考えられていないと思います。


それよりは、自分の生活の周り、自分のいるところでしっかりとした地盤固めをしたほうが、いいのではないか。足元を見つめ直したい。


この本を書いた背景には、そういう気持ちもありました。それが、ボトムアップにもつながります。


まさお(2021年4月04日)
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