これまで何度となく、再生可能エネルギーで発電された電力のための固定価格買取制度(FIT制度)について述べてきました。しかし、実際の固定価格はどうなっているのか、まだ具体的に取り上げたことがありません。
ドイツでは再生可能エネルギー法によって、FIT制度の対象となる再エネ発電施設が規定され、固定価格は再エネの種類と発電施設の発電出力に応じて規定されます。
風力発電と太陽光発電では、原則として固定価格が毎年1%低減することになっています。ただ再エネの普及状況やそれに伴う消費者の負担の大きななどに応じて、再生可能エネルギー法を改正することで、発電施設によっては発電出力に応じて固定価格を大幅に低く抑えたこともありました。
再生可能エネルギー法初期段階の固定価格は、以下のようになっていました。
• 風力発電(陸上):9.10セント/kWh(2000年)
• 太陽光発電:45.7セント − 57.4セント/kWh(2004年)
• バイオマス:8.40セント − 11.50セント/kWh(2004年)
しかし現在、固定価格は2017年から入札によって決定され、以下の通りになっています。
• 風力発電(陸上、出力750kW超の設備):
4.02セント − 5.83/kWh(2017年)
4.73セント − 6.26/kWh(2018年)
• 太陽光発電(出力750kWp超の設備):
5.25セント − 6.87セント/kWh(2017年)
4.33セント − 4.69セント/kWh(2018年)
• バイオマス(出力150kW超の設備):
14.30セントkWh(2017年)
14.73セント/kWh(2018年)
これを見ると、太陽光発電の固定価格が過去15年で大幅に下がり、風力発電とほとんど変わらないくらいになっていることがわかります。
それに対して、バイオマスでは固定価格が初期段階より上がっています。
これは、バイオマスによって発電(ドイツでは主にバイオガス発電)された電力がベース電力よりは高い調整力として使われるからです。調整力の取引価格は市場において高騰しており、バイオマスの固定価格をその市場状況に合わせる必要があったのだと予想されます。
バイオマスで発電するには燃料が必要なので、限界費用が発生することも、限界費用のない風力発電や太陽光発電と異なります。
固定価格は、慎重に市場を観察して設定しなければなりません。
固定価格が高すぎると、関連業界が急速に成長するとともに、再エネも早いテンポで普及します。しかし、すぐに再エネが飽和状態になり、普及のテンポが急激に落ちます。
その結果、関連業界が生産過剰状態となり、バブルがはじけます。
それでは、再エネを普及させたことにはなりません。
ある程度ゆっくりしたテンポで、業界と市場を育てることを考えながら固定価格を設定しなければなりません。
(2019年11月13日)
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