前回、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)において、バイオマスで発電された電気の固定価格が高い理由について述べました。今回は、FIT制度において風力発電と太陽光発電の固定価格が引き下げられるのはなぜか、ドイツの場合を事例にして述べます。
まず、固定価格を引き下げるとはどういうことなのか、しっかり把握しておきます。
一旦ある発電施設に対して決まった固定価格は、FIT制度においては20年間固定されます。つまり、FIT制度の下で発電を開始した時点での固定価格は、20年間変わりません。
それでは、おかしいですね。固定価格が変わらないのだから。
しかし、毎年新しい発電施設が設置されています。それで新たに設置された発電施設については、そこで発電される電気に対して前年の固定価格よりも低い固定価格が規定されます。FIT制度を規定する再生可能エネルギー法が改正されて固定価格が変更されない限り、新たに発電を開始する発電施設に対する固定価格は、年毎に1%低減されます。
繰り返しますが、すべての発電施設の固定価格が毎年引き下げられるわけではありません。新しく設置された発電施設に対してだけ、年毎に低減された新しい固定価格が適用されます。
それでは、なぜ新しい発電施設に対して固定価格が引き下げられるのでしょうか?
固定価格を引き下げる一つの理由は、発電設備の需要が増えれば増えるほと、その製造コストが下がるからです。さらに、再エネが普及するとともに学習効果が生まれ、発電コストも下がっていきます。
FIT制度は、再エネで発電するという新しい発電方法で発電された電気を意図的に割高に買い取る制度です。それは、新しい発電方法ではこれまで長年発電してきた従来の発電方法と対等に競争することができないからです。
ただそのまま固定価格を高いままにしていては、補助漬けにするのと変わりません。そのため、コストが下がるのに合わせて、電気の買取固定価格も引き下げます。
こうして、再エネが独り立ちできるようにします。
製造コストと発電コストが下がるのに応じて、固定価格を引き下げ、従来の発電方法との競争を促進します。そして、できるだけ早く火力発電や原子力発電など従来の発電方法と対等に競争できるようにするのです。
再エネという新しい発電方法を普及させながら、育てる。それが、FIT制度のメインの目的です。
そのためFIT制度自体も、電力市場の状況や再エネ業界の状況、再エネの普及状況などに合わせて改正していく必要があります。
(2019年11月27日)
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