前回、電気料金が上がるのは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)による制度上の問題であることを書きました。
それなら、再エネで発電されたグリーン電力を供給してもらわないようにすれば、電気料金は下がるのでしょうか。
いや、グリーン電力の供給契約を結んでいなくても、FIT制度による負担がなくなって電気料金が下がることはありません。
それは、なぜでしょうか?
この再エネいろはにおいて、再エネで発電されたグリーン電力が送電網に入ってしまうと、もう発電源は区別できなくなると書いたことがあります。実質的には、すべての電力商品に再エネで発電された電気が混じっています。
グリーン電力の供給契約を締結している最終消費者の場合、供給された電力がグリーン電力かどうかを、帳簿上そう換算するだけにすぎません。
そこでは、再エネで発電された電力が送電網に供給された量と、最終消費者に供給されたグリーン電力の量が同じになることが証明されなければなりません。それで、グリーン電力を供給したことにします。
グリーン電力の供給契約を結んでいない最終消費者においても、再エネで発電された電力の割合が増えるにしたがい、実際に供給されている電力において再エネで発電された電気の割合が増えていると見ます。
それを前提にして、FIT制度によって発生する負担を全体で分配します。
ただそれでは、電力消費の多い産業の負担が増大して電気料金が上がり、国際競争上不利になる可能性があります。
そのため、たとえばドイツでは電力消費の多い一部企業には、FIT制度の負担を免除します。その結果、その分の負担が一般消費者に移譲され、一般消費者の負担が増えます。
それが、一般消費者の電気料金がより上がる要因にもなっています。
FIT制度の負担は、社会コストだと見るべきだと書いたことがあります。それは、再エネへのエネルギー転換が社会全体の課題であるからです。だから、その負担を社会全体で負っていかなければなりません。
ただその負担によって、産業界においては国際競争において不利になるとか、低所得者においても電気料金の負担で生活できなくなるなどの悪影響が出る可能性もあります。そういうところでは、何らかの救済措置を設ける必要も出てきます。
でもそうした問題は、再エネが100%化されるまでの過渡的な問題です。状況に応じて、柔軟に対応していかなければなりません。
(2019年12月16日)
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