ドイツでは、新型コロナの影響で来年2021年から電気料金が上がることが心配されます。それは、なぜでしょうか。
固定価格買取制度(FIT)制度によって、現在再生可能エネルギーが促進されています。再エネで発電された電気を市場で取引するよりも割高で買い取るシステムです。それによって、再エネ発電に投資しやすい環境をつくります。その割高分は、電気料金に上乗せして回収されます。
その額は現在、1kWh当たり6.2セント(約7円弱)。その額が、2021年に8セント(9円弱)になると予想されます。約30%割高になるということです。
新型コロナ対策として、ロックダウン(都市封鎖)によって経済活動が大幅に制限され、縮小しました。需要が減少したので、原油価格が下がります。ガソリンや灯油、ガスなどの燃料消費が、大幅に減少しました。
それにともない、都市の大気汚染が減り、空がより青く見えるようになりました。ベニスでも観光客が減って、運河が青々ときれいになりました。
でも原油価格が下がったことが、再エネに悪影響をもたらします。それは、なぜでしょうか。
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ドイツの石炭露天掘り現場 |
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原油価格が下がり、石炭やガスなど火力発電の燃料が安くなりました。その結果として、電気の卸売市場において電気の取引価格が下がります。というのは、電気の卸売価格を決める一つの大きな指標が、石炭やガスなどの燃料費だからです。
それにともない、再エネ電気を買い取る固定価格と、電気の卸価格の差がより大きくなりました。再エネの固定価格には変動がないのに、電気卸価格だけが下がったからです。
そのより大きくなった差額分が、電気料金に上乗せされます。だから、新型コロナの影響で電気料金が上がります。この差額が、すべての電気に上乗せして回収されるからです。再エネで発電された電気だけに上乗せされるわけではありません。
こうして見ると、新型コロナで電気料金が上がるのは制度上の問題であることがわかります。それなら、FIT制度を廃止したほうがいいのでしょうか。
そうは思いません。現段階ではまだFIT制度があるから、再エネを増やすことができます。それをなくすと、再エネの拡大にブレーキをかけることになります。
問題はむしろ、電気の卸売価格が発電燃料費に依存していることにあります。でも再エネで発電すると、燃料費がかかりません。電気がすべて再エネで発電されるようになれば、電気の卸価格は燃料費に左右されなくなります。燃料費がかからないので、卸価格もさらに下がります。
そうなるように、できるだけ早く再エネ化を促進しなければなりません。その結果、電気料金もパンデミックに影響されなくなり、安定します。
そのためには、まだまだFIT制度が必要です。
(2020年6月17日)
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