前回、ドイツにおいて再生可能エネルギーが拡大するにつれ、大手電力が再編されたことについて書きました。ドイツではその結果、最大手のEonが配電とシステム開発サービスに特化され、第2位のRWEが発電(再エネも含む)と高圧送電に特化されました。
ぼくは、ああこれで勝負ありだと思っています。RWEの完全な負け。それどころか、RWEがいずれ消滅するのではないかとさえ思っています。
それは、なぜでしょうか。
前回も書きましたが、発電ではもうビジネスができなくなっています。それは、一つに電力市場の自由化で、競争が激化しています。さらに、電力業界の利益を支えてきた電力市場特有のシステムもなくなってきました。それでは、発電で利益を挙げるのは無理です。
もう一つは、再エネの拡大です。再エネ発電では燃料費がほとんど不要なので、利益率がたいへん薄い。大手にはなかなか進出できません。同時に、燃料が不要な再エネが拡大するとともに、火力発電や原子力発電など従来の発電方法は競争力を失っています。
再エネの拡大は、大規模施設と集中化型発電から再エネ中心の小規模施設と分散型発電に代わることを意味します。その意味で、大規模施設と集中化型発電に依存する大手電力は何らかの形で再編せざるを得なくなっています。
ドイツで大手電力が再編したのは、当然の成り行きだったといわなければなりません。
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ドイツ北西部ザーベックのエネルギーパーク。こうしたエネルギーパークができると、地元に雇用が生まれる |
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となると、大手電力の再編で雇用はどうなるのか、大手電力に依存してきた地域はどうなるのかという疑問も出てきます。
ドイツで再エネに関係する部門で働いている就業者数は、30万人余り(2018年)です。ピークは、2011年の40万人で、それ以降就業者は減る傾向にあります。ただ新しい産業であるだけに、再エネによって30万人の新しい雇用が創出されたことになります。
この数字をどう見るかです。大手電力の抱える雇用に比べると、かなり少ないように見えます。でも問題は、その中身です。
再エネでは小規模分散型発電なので、一度にたくさんの雇用は生まれません。でも、再エネで発電する地元に必ず新しい雇用が生まれます。地元の経済を活性化させます。雇用も分散して創出されるということです。それが、構造改革を促すインパクトとなります。
再エネが小規模分散型なので、それを地域全体、さらに全国で安定供給するためには、配電網を整備して電力供給を機能させ、電気と熱供給、動力燃料を連結して柔軟にエネルギーを供給する(セクターカップリング)ための新しいシステム開発とサービスが必要になります。そこに目をつけたのが、ドイツ最大手のEonでした。とても賢い戦略だといわなければなりません。
また、システム開発に必要な技術革新によって国際競争力も増し、技術を国外に輸出できるようにもなります。それによっても、新しい雇用が生まれます。
再エネには、再エネに適した構造が必要です。そのためには、大手電力も必然的に再編されなければなりません。
(2020年7月08日)
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