これまで、再生可能エネルギーには再エネに適した構造が必要だと書きました。そのためには、大手電力ばかりでなく、送電網などのインフラも含めて電力供給システム全体が再編されなければなりません。
ドイツはそれに備えて、電力業界がすでに再編されています。送電網の整備も進めています。そのテンポは、まだ遅いといわなければなりません。でもドイツの電力供給システムは、確実に改革途上にあります。
それに対して日本では、政府がようやく再エネを進めないと世界の流れから取り残されることを認識したとしています。しかし実際にやっていることを見ると、そうは思えません。
日本では再エネといいながらも、電力市場では従来通りの構造を維持することしか考えられていません。
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高圧高架線鉄塔 |
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その典型的な施策が、容量市場を導入することです。すでに2020年4月から、そのための準備がはじまりました。
これまで電力市場では、電力量(kWh)だけが取引されてきました。それに対し、容量市場では将来の電力供給力(kW)が取引されます。発電所の電力供給力を金銭として価値化し、それを取引対象とします。こうして、発電所にお金が流れるようにします。
電力市場では、電気小売の完全自由化で競争が激化しています。電力業界はもう電力量だけでは、収益を上げることができません。その結果、既存発電所をメンテナンスして維持するほか、新しい発電所を建設する資金不足が深刻になりはじめています。
容量市場は、それをカバーして、発電所を維持、拡大するものです。ここで、「将来の供給力」のためといっています。でもそれが、新しく建設される発電所だけを対象としているわけではありません。既存の発電所も将来まだ電力を供給するので、既存の古い発電所の供給力も取引の対象になります。
これは、従来の発電方法による電力供給システムを維持しようとするものです。つまり、火力発電にも原子力発電にお金が流れるようにして、従来の発電方法をできだけ長く維持します。
それでは、再エネによる構造改革は期待できません。再エネも普及しません。従来の電力供給システムを維持して、再エネを拡大させないようにする仕組みともいえると思います。
日本政府は、世界から取り残されないために再エネを普及させるとしています。しかし容量市場は、それとはまったく反対のことを意味します。再エネを潰したいのかと思えてなりません。
(2020年7月22日)
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