再生可能エネルギーで発電された電気に対する固定価格買取制度(FIT制度)は、再エネで発電するための補助制度だと思われています。これは、日本ばかりではなく、ドイツでもそう思っている人が多いと思います。
FIT制度は、再エネで発電された電気を通常の流通価格よりも割高で買い取るよう義務つける制度です。再エネで発電することを優遇するので、補助制度だと思われています。
FIT制度において、国は補助金を給付していません。FIT制度は電力市場に組み込まれ、FIT制度による負担は電気を最終的に消費する消費者が負担します。
ドイツを含めEUでは、国が直接に補助するわけではないので、間接的な補助制度だともいわれます。
でも本当に、FIT制度は補助制度でしょうか。
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ベルリン郊外のフェルトハイムに設置されている風車 |
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ぼくはベルリン@対話工房のサイトにおいて何度となく、FIT負担は社会コストだといってきました。たとえば火力発電による排気ガスで、喘息などの病気が増えます。そのためのコストは、発電のコストとは見なしません。健康コストとして、社会全体で負担しています。これも、社会コストです。
FIT制度は、はじまったばかりの新しい発電方法が火力発電や原子力発電など従来の発電方法に対して、不利にならないように、育成することを目的にしています。割高で電気を買い取ることで、再エネに対する投資も促進します。
今再エネを拡大することが、現在ばかりでなく、将来にとって利益になるため、そのコストを社会全体で負担します。
だから、FIT負担は発電コストではありません。実際、電気の卸売市場においても、FIT負担は電気の卸売価格には加算されません。
ぼくが、FIT負担を社会コストだというのは、こういう背景があるからです。
FIT制度は表面的に見ると、再エネ発電を優遇するので、再エネ発電に対する補助制度に見えてしまいます。しかし実態を見ると、そうではありません。FIT制度は、電力市場の中に組み込まれ、その中で機能しています。
従来の発電方法においても、それがはじまって機能するようになるまで、いろいろな形で支援されてきました。今も、支援されています。その過去からある恩恵を見ると、再エネによる新しい発電方法は電力市場において、そうした従来の発電方法とは対等に競争できません。
FIT制度はこうした両者の格差をできるだけ小さくして、今平等に競争できるようにする制度であるともいえます。
(2021年2月17日)
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