2021年7月28日掲載 − 再エネいろは
統合費用は発電コストなのか?
再生可能エネルギーQ&A

前回再エネいろはではじめて、「統合費用」ということばを使いました。そこでは、再生可能エネルギーの普及に伴って発生する統合費用が、正当に換算されているかどうかについて問題提起しました。


日本で統合費用を試算しているのは、政府の地球環境産業技術研究機構(RITE)です。


まず、発電コストについて定義が変わってきたことについて述べなければなりません。従来の発電コストは、電源に関わるだけのコストでした。しかし再エネという新しい電源が出てくると、新しい電源で発電された電気を送電するため、送電網(系統)などを整備するコストが発生します。それは、新しい電源が出てきたことで、電力システムを安定させるために系統を整備するからです。そのコストが統合費用になります。特に日本では現在、統合費用は系統への影響を考慮した発電コストだとして、電源コストに統合費用を合わせたものが発電コストだとされています。


ぼくはドイツから見て、統合費用は発電コストだとは考えていません。再エネが普及するドイツでも、再エネによる統合費用が発生しています。でもそれは、むしろ系統というインフラを整備するコストとして捉えられているように感じます。というのは、系統整備に必要な費用は必ずしも、再エネだけによって発生するものではありません。技術革新や新しい技術的知見、社会とその構造の変化などによって、電力システムが変化して当然です。それに対応するために、系統を整備します。


従来の発電方法が普及する時にも、系統整備費用が発生しています。系統では、既存の設備を維持するだけでも費用が発生します。需要と供給の変化に応じ、系統も整備しなければなりません。ぼくはだから、統合費用は社会インフラ整備に必要な費用だと思っています。社会全体で共同で負担すべき特徴を持っています。社会コストであり、発電コストに加算するべきものではないと思っています。


ドイツでも再エネの普及によって統合費用が発生するので、再エネは高いと議論されます。でもドイツでは日本ほど露骨に、再エネは統合費用があるから高いという議論はされません。


地球環境産業技術研究機構(RITE)が換算した統合費用を見ると、統合費用を発生させるのは再エネだということが前提になっているように感じます。再エネを普及させ、効率よく利用するには、いろいろな分野と連結(セクターカップリング)して、柔軟性を持たせます。でもそれが、考えられていません。


エネルギーの貯蔵においても、蓄電池の利用に限定されています。ぼくが指摘してきたように、電気自動車の蓄電池を電力システムの一部として利用することはまったく考えられていません。揚水発電を利用する可能性も考慮されていません。再エネでは効率化を図ることが不可能だとしか、見られていないように感じます。


もう一つ気になるのは、学習効果が十分に配慮されていないことです。新しい電源が出てきたら、当初いろいろコストが発生します。それは当然です。でも利用に慣れるにつれ、コストが削減されます。それは、新しい電源を利用するとともに、学習するからです。その学習効果についても、RITEの試算では過小評価されています。


RITEの試算では、再エネを本気で拡大しようと思っているのか、とても疑問に思います。再エネのことを本気で考えるなら、いかに効率よく利用すべきかも考えるはずです。


統合費用には、いろいろな思惑の入る余地があることということです。それでは、発電コストを公平に比較することは難しくなります。日本の統合費用には、とても政治的な意図があるように思えてなりません。


(2021年7月28日)

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関連サイト:
地球環境産業技術研究機構(RITE)のサイト
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