二酸化炭素の排出を実質ゼロにする脱炭素化によって、社会活動に必要なエネルギーはほとんどが電気になります。それとともに、電力需要が大幅に増大するのは前回書きました。
それに伴い、既存の送電網を整備しなければなりません。通常は、そう思われています。でもぼくは、必ずしも送電網を整備する必要はないと思っています。
それは、なぜでしょうか。
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ベルリンの南十字駅前にある蓄電池コンテナ。これは、カーシェアリング電気自動車充電用に設置された。その近くには、ソーラーパネルのほか、小型のダリウス型風車もある。 |
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脱炭素社会では、電気は再生可能エネルギーによって発電されます。その中心は、風力発電と太陽光発電です。
風力発電は、陸上風力発電と洋上風力発電に分かれます。陸上では土地に限界があるので、生活環境や自然環境を保護するには、陸上風力発電はいずれ限界にきます。洋上風力発電も、海洋環境や漁業のことを考えると、設置可能な場所が限定されます。
ただ今はまだ風力発電による発電電力量が多いので、再エネ発電が増えると、送電網の整備が急務だといわれます。でも風力発電には、限界があります。さらに脱炭素化によって、産業において水素の需要が爆発的に増えることを考えると、風力発電においては余剰電力を使って、水素を製造するほうが効率がいいと思います。その水素は、産業用にも発電用にも使えます。
そうすれば、送電網の容量不足から出力抑制する必要もなくなります。ただその時の原則は、風力発電するところで水素を製造するということです。
再エネでは現在、多くの国において風力発電が中心になっています。しかし将来は、どこにおいても太陽光発電が中心になります。住宅やビル、工場などほとんどの建物の屋根にソーラーパネルが設置されるようになるからです。太陽光発電による発電電力量が風力発電を上回るのは、そう遠いことではありません。
ただ太陽光発電では、夜間発電することができません。そのため、ソーラーパネルのあるところには小型の蓄電池を設置します。車のあるところでは、電気自動車の蓄電池も電力システムに利用します。それらすべての蓄電池を電力システムに組み入れ、巨大なバーチャル(仮想)蓄電池をつくればいいのです。
それを人工知能(AI)で制御させます。制御させるとは、充電から給電までを電力システムと電力消費と需要の状況を把握して、完全自動にするということです。
ここでは太陽光発電においても、発電地において蓄電するのが重要です。
こうすれば、送電網をそれほど整備する必要はなくなります。そのほうが、送電網整備に莫大な資金を投入する必要はありません。高架線の設置に対する住民の反対で、整備が遅れる心配もありません。
送電網の整備ではなく、蓄電池をうまく組み入れて配電網の構造を改革したほうがいいともいえます。そのほうが、脱炭素化による電力の需要拡大に向け、最も早くてインテリジェントで、格安な解決方法だと思います。
(2021年9月30日)
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