ぼくは前回、再エネの拡大とともに送電網を整備するよりは、配電網に蓄電池をうまく組み入れて配電網の構造を改革したほうが、最も早く、インテリジェントな方法で、より安く電気の安定供給を保証できるようになると書きました。
でもそう書くと、いや現在主流の蓄電池であるリチウムイオン電池の製造にはたくさんの電気を使うし、リチウムイオン電池に必要なリチウムの採掘では労働者が低賃金、過酷な労働条件で働かされているので問題だといわれます。
でも、本当にそうでしょうか。
|
|
たくさんのリチウムイオン電池の並ぶ15MWの蓄電池施設。この蓄電池施設は周辺で風力発電された電気を蓄電し、送電網、配電網に電気を供給する。ドイツ北東部シュヴェリーン市で撮影 |
|
まず、ぼくたちが日常使っているスマートフォンやノートブックパソコン、タブレットパソコンも、リチウムイオン電池のおかげて動いていることを忘れないでください。それは問題ないけど、その他は問題だというのはおかしくありませんか。
労働者を酷使している問題は、鉱物資源に対してもフェアトレードの証明書を求めることによって、ある程度は解決できます。それについては、フェアフォンの記事(「鉱物資源をフェアトレード化する」)でも書きました。
次に、電気自動車を見てみましょう。電気自動車もリチウムイオン電池を使っているので、同じように批判されます。特に、蓄電池の製造にたくさんの電気を使うので、電気自動車は有害だともされます。
でもガソリン車と比べると、電気自動車では部品が半分以下になることを忘れていませんか。たとえば電気自動車に、ギアは必要ありません。ギアを製造するにもたくさんのエネルギーを使っていることを忘れてはなりません。
単に蓄電池の製造にたくさんの電気を使うからと批判するのではなく、自動車全体の製造にどれくらいの電気が必要になるかを見て、比較すべきではないかと思います。
さらに、現在主流のリチウムイオン電池は、過渡的な技術であることも忘れてはなりません。各国で各社が競い合って、新しい蓄電池の開発を行なっています。
いずれ近いうちに、新しいタイプの蓄電池が開発されるのは間違いありません。新しい蓄電池の製造に、どれくらいの電気が必要になるのでしょうか。それは、その時になってからでないとわかりません。
さらに蓄電池をリサイクルする方法も、これからいろいろ開発されてくる可能性があります。
こうして先を見ながら、将来の脱炭素化をどうすれば、効率よく実現できるのか。それについて、建設的な議論をするほうがより実りがあると思います。
(2021年10月06日)
前の項へ←← →→次の項へ →一覧へ |