今年3月のEU首脳会議と6月のG8サミット後、ドイツ政府は、温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比で40%削減するという独自目標を設定していた。
それを具体的に実現するため、ドイツ政府は8月23日、今後のドイツの温暖化対策の基盤となる総合的なエネルギー気候変動計画について合意した。
計画は、分野毎に全体で29の施策に及び、来年から温暖化対策の全体予算をこれまでの年間7億ユーロから26億ユーロに引き上げるとしている。だが、政府の推定では、この予算枠では35ないし36%の削減効果しかない見込みで、政府は残りを州や自治体レベルでの取り組みなどで削減していくとしている。
今回の合意内容では、これまでなかなか手をつけられなかった交通と民生の部門にメスを入れ、それによってエネルギーをより効率的に利用しようとしている点が注目される。具体的には、
・自動車税をこれまで以上に二酸化炭素の排出量に応じて課税する
・自家用車の二酸化炭素平均排出量を2012年までに1km当たり130gに制限する(現在164g)
・バイオ燃料の消費量を2020年までに全体の20%に拡大する
・これまで排出権取引の対象となっていなかった飛行機と船舶を排出権取引の対象とする
・飛行機の空港使用料を飛行機の温室効果ガス排出量に連動させる
・来年から新築建屋のエネルギー効率をこれまでより30%引き上げ、さらに2012年からもう30%引き上げる
・新築建屋の暖房、給湯用の熱供給の15%を再生可能エネルギーでカバーすることを義務付る
・夜間電力を利用する夜間蓄熱暖房器を今後10年間で廃止する
など。
また発電では、2020年までに再生可能エネルギーとコージェネレーションシステムで発電量の50%以上を賄うようにするという。
問題は、新しい温暖化対策によって発生するコストだが、政府は年間80億ユーロ超の負担になると推定している。だが逆に、省エネ効果で年間160億ユーロ弱の便益があるという。
それに対し、経済界は政府の試算には納得しておらず、新しい温暖化対策によって経済界に莫大なコストが発生すると反発している。
なおこの問題で、たとえばベルリンのドイツ経済研究所などは、年間の負担は30億ユーロ、年間の省エネによる便益は55億ユーロと試算している。
(2007年9月3日) |