2004年7月08日掲載、2020年7月15日移転 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
天ぷらの匂いを嗅ぎながら運転するのも悪くない

日本では、ハイブリッド・カーが話題になっている。ドイツでも、たとえばBMWが7シリーズでハイブリッド・カーを開発した。ただこれは、ミュンヒェン 空港内だけで試乗される試作車で、商用化は目指していない。BMWの場合は、燃料電池の利用に向けて燃料となる水素の貯蔵、供給技術を開発する目的があっ た模様で、試作車と同時に液体水素スタンドも開発された。


ドイツではむしろ、ハイブリッド・カーではなく、燃料電池車の開発がメイン。Aクラスで燃料電池車を開発しているダイムラークライスラーが一番進んでい ると思われる。バスでは、すでにベルリンなどいくつかの都市で試作車が公共交通用に利用されている。


燃料電池車で問題となるのは、燃料となる水素の供給スタンドだ。現在利用されているのは液体水素だが、この場合マイナス250度Cくらいの低温で貯蔵し なければならない。この種の水素スタンドの多くは、ドイツのリンデ社製のもの。


しかし、燃料電池のようなハイテク技術でなくても、環境保全に貢献できる簡単な技術がある。それは、植物など再生資源(バイオマス)を原料として燃料を 製造する技術だ。


たとえばブラジルでは、サトウキビをアルコール発酵させてエタノールを製造し、車の燃料として利用している。現在、動力燃料全体の25%がエタノールだ という。エタノールは酒の主成分なので、”イモ焼酎”を燃料にして車を走らせているということか。


ドイツでは、エタノールはまだ普及しておらず、ようやくエタノール製造工場が建設され出した。


それに対してドイツでは、菜の花を原料としてバイオディーゼルを製造している。菜の花だからサラダ油を想像するが、バイオディーゼルは腐食油。サラダ油 の残渣だ。バイオディーゼルの製造業者は全国で23社あり、2003年の製造量は85万トン。市販のディーゼル車にちょっと手を加えれば、バイオディーゼ ルで車を走らせることができる。自動車メーカーによっては、バイオディーゼル仕様をはじめから用意しているメーカーもある。2003年のバイオディーゼル の販売量は約65万トンで、動力燃料全体に占めるバイオディーゼルの割合は0.9%。普及率はまだ低いが、バイオディーゼルは急速に普及しはじめており、 バイオディーゼルを販売するスタンドはすでに全国で1700箇所以上に及ぶ。


ドイツ政府はバイオディーゼルを普及させるため、バイオディーゼルから動力燃料に課税される鉱油税(日本でいえば、揮発油税に相当)を免除している。そ のため、バイオディーゼルの市販価格はディーゼル燃料に比べると、1リットル当たり数セント安い。バイオディーゼルはディーゼル燃料の添加剤としても使わ れるが、ドイツでは添加剤としては使わず、通常バイオディーゼルだけを燃料として車を走らせている(註1)。


排ガスは、油物を揚げているような匂いがするというから、天ぷら好きの方にはこちらをお勧めしたい。ただ、それによって食欲をそそられる心配があるか ら、食べ過ぎに要注意!


もちろん、菜の花から製造されるサラダ油も燃料として使える。以前、ベルリンにサラダ油を添加剤として利用しているタクシーがあると聞いたが、その後どうなっただろうか。


その他、バイオマスを車の動力燃料とする技術では、ザクセン州フライベルクのコーレン社のCarbo-Vプロセスも注目されはじめた。これは、とうもろ こしやサトウキビ、木材や木屑、わらなどのバイオマスを3段階でガス化させ、合成ガスを生成する技術。生成された合成ガスは、燃焼燃料や動力燃料として利 用でき、すでにダイムラー・クライスラーやフォルクスヴァーゲンが目を付けている。(fm)


(註1)今年1月から、バイオディーゼルを最高5%までディーゼル燃料に混合することが認められている。

(2004年7月08日)2020年7月15日、forum bmkサイトから移転
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