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ドイツで太陽熱発電所を設置へ
(2006年9月11日)

太陽エネルギーを利用する方法としては、太陽電池で発電する太陽光発電と、太陽熱を冷暖房や給湯の熱源として利用する方法が知られているが、太陽熱を発電に利用する太陽熱発電はあまり知られていない。これは、太陽光を集光器で集めて、その熱エネルギーで蒸気を発生させて発電を行なうもので、熱源として太陽エネルギーを集めて利用するという点以外は、火力発電と大きな違いがない。


太陽熱発電システムはすでに、米国や日本、スペインなど日照条件のいい諸国において実証試験が行なわれてきた。ドイツでは、秋から春にかけて日照時間が短く、これまで太陽熱発電の可能性は実証されてこなかった。ただこれは、ドイツが太陽熱発電に関心がなかったということではなく、スペインの太陽熱発電プロジェクトでは、ドイツが重要な役割を果たしている。


太陽熱発電の場合、日照条件がいいことが必須条件ということではない。というのは、太陽光は集光された後、水などの媒体で熱として蓄熱されるので(化学エネルギーとして蓄えることも可能)、必ずしも太陽の日照時間に依存するわけではないからだ。また、熱が高温であればそれだけ熱損失が高く、高温であることが必ずしも得策ともいえない。たとえば、ブタンやトルエン、アンモニアなど低沸点熱媒体を利用すれば、低温でも効率よく発電することが可能である。


前述したように、ドイツは太陽熱発電の技術開発に積極的に参加してきたが、これまで国内に太陽熱発電システムを設置してこなかった。しかし今年7月、ドイツ西部にあるノルトライン・ヴェストファーレン州のユーリヒにおいて、ドイツ国内における太陽熱発電の可能性を実証試験するため、太陽熱発電システムの建設がはじまった。ここで採用されるのは、太陽光をヘリオスタット(平面鏡)で反射させて、太陽光をタワーの上部に設置された集熱器に集中させるタワー集光方式である(以下の図参照、出所:ドイツ環境省)。


ヘリオスタット(平面鏡)は約2万平方メートルの敷地に設置され、それによって集光された太陽光から800から1000度Cの熱が得られる。その熱は、集熱器中の溶融塩を含む水を熱媒体として蓄熱器/熱交換器に伝達され、そこで蒸気を発生させて蒸気タービンを回転させる。


発電システムの定格出力は1.5MWで、運転開始は2008年になる見込み。投資額は2170万ユーロで、連邦環境省、地元の都市電力公社、ノルトライン・ヴェストファーレン州、バイエルン州が共同で補助する。


なお、ユーリヒの太陽熱発電システムを開発するのは、ドイツ航空宇宙センターとミュンヒェンのエネルギーシステム会社である。(福本)



(2006年9月11日)
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