2013年7月27日掲載 − HOME − エネルギー・インタビュー一覧 − インタビュー
インタビュー:
ラインハルト ・ クリスティアンゼン

市民風力発電パークを設置するイニシアチブを取り、市民風力発電関連施設を経営する市民

クリスティアンゼンさんはドイツ最北端、デンマークとの国境沿いにあるエルヘフト村で生活している。

普段は保険勧誘の仕事をしているが、エルヘフト村を中心に市民が出資して風力発電パーク、太陽光パーク、変電所などを設置するイニシアチブを取った。

これらの施設が完成した後は、施設の運営会社社長も兼務するほか、市民参加の発電と送電の実現に向けて活動している。


Q:市民風力発電パークといわれるのはなぜか

地元に住む住民が、共同で出資したからだ。200人以上の住民が、出資して参加している。地元の農民は、みんな参加している。ただ、農民の割合は全体としては多くない。

国境を超えたデンマークの住民にも、参加してもらっている。低音、景観公害などがあるからだ。


Q:パークの規模は

この風力パークには、7基の風車がある。風が十分に吹けば、2万軒分の電力を発電することができる。


Q:これまで問題はなかったのか

過疎地で送電線の容量が十分でないので、発電した電力をすべて送電できないという問題がある。でも、大きな問題はない。

2005年から送電網の容量が足りないといってきたが、整備されるまで時間がかかっている。ただこれはむしろ、政治と送電会社の問題だ。


Q:送電線の設置には、住民の反対も多いと聞いているが

透明性を得ることで、送電網整備に対して住民のアクセプタンスを得ようとしている。さらに、市民が送電線の設置にも参加できるようにしている。

そのため、今準備しているところだ。


(註:2013年1月、この地域で建設され380kV高圧線に投資される資金の一部を住民が出資して、利益の配当を受けることができるようにすることで、地元州政府と送電会社が合意した。)

Q:なぜ、ここ地元で風力発電をはじめたのか

自分はエルフェフトで生まれ、農業を勉強した。しかし農業だけで生活していくのは難しい。それで、91年に保険関係の仕事をはじめた。

環境団体BUNDで自然保護のために活動してきたこともあって、88年に風力発電に関して催し物を企画したこともあった。

風力発電をはじめたのは、地元でお金を稼ぐためだ。

ここは、観光産業もなければ産業がない。農業以外には産業がない。こんな過疎村がどうやって自立して収入を得ていくのか。

どこか他の場所に風車を設置しても、それで得られたお金は(大手電力会社のある)ミュンヒェンなど大都市にいってしまうだけだ。

だから、地元ではじめなければ、地元にはお金は落ちない。それが一番のポイントだ。

それで、周辺の他の村がわれわれの活動に追従していった。そうして、地元で生活する価値が生まれ、お金を儲けることができるようになった。

ただ、(出資していない住民の中には)好ましくないと思っている住民がいるのも事実だ。嫉妬もあると思う。


Q:その他に問題になっていることはないか

野鳥の問題もいわれるが、風車設置前と設置10年後の昨年に調査しているが、野鳥の生態に変化がないことを確認している。

もちろん、渡り鳥の通り道や繁殖地に風車を設置する場合は、慎重に計画しなければならないでない。


Q:活動はこれからどう広がっていくのか

今後は、周辺地域で市民発電を行う計画を支援していく予定だ。

地元で住民が風車に出資すると、自分のお金がどこにいったか目に見える。国際的に、市民風力発電が広がることを期待している。

ただ自治体によっては、市民風力発電に土地を提供してもらえないところがあるのが残念だ。


(2012年11月、市民風力発電パークの風車の上にある発電機などの入った箱形のナセルでインタビュー)
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