2014年10月11日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
日本の電力会社が自然エネ買取を中断

日本では、電力会社が軒並み自然エネ買取を中断しようとしています。それを見ると、何かドイツの90年代のはじめの電力の固定価格買い取り制度導入で起こった初期症状と似ているように思います。ドイツの場合は、当時は風力が中心した。


ドイツの場合、自然エネルギーの優先買取が法的に規定されているので、電力会社は自然エネルギーで発電された電力を買い取らなければなりません。そのため、系統容量に問題があるなどして買い取れない電力に対しては、電力会社が損害賠償します。

そうなると、初期段階では自然エネルギーの増えたある一部の地域の電力会社の負担ばかりが増えるので、その負担を全国の電力会社に分配することにしました。


固定価格買い取り制度導入初期段階では、発電余剰分は広域運用でかなりカバーできますが、いずれ無理になります。日本では、各地に大口需要地域が分散しているので系統容量の問題は起こらないという声をよく聞きますが、ドイツの経験からすると無理だと思います。結局、自然エネルギーの普及によって発電構造が大きく変わるので、既存の送電構想ではいずれ無理がきます。


ドイツの場合、日本と違って隣国が陸続きで何カ国もあり、系統がつながっていますので、その点有利なはずです。それでもすでに問題が起こってい ます。これからもっと問題になることがわかってきていますので、送電線網整備がたいへん重要な課題になっています。


日本は孤島である上、広域運用といっても周波数まで違うので、広域運用には限界があります。


広域運用、自由化がはじまると、それはそれでまた新しい問題が出てきます。ドイツでは、送電線接続料の問題が落ち着くまで何年もかかりました。電力会社間のいやがらせ、電力供給会社を変更しようとする消費者に対するいやがらせなどが、初期段階では絶えませんでした。


固定価格買い取り制度は、自然エネルギーを普及させる意味で初期効果はたいへん大きい。でも、問題も多く抱えています。たとえば買取料金を高く設定しすぎると、 自然エネルギーが投資対象にしかなりません。その結果、すぐにバブルがはじけます。自然エネルギーの割合が増えるに従い、買取負担で電力料金が上がっていきます。


ドイツの場合、稼働年の買取価格が20年保証されますので、それから20年逃れられないのは大きな負担です。


ただ、こうした負担は事前投資なんだという見方も必要です。自然エネルギーへシフトするための投資なんだと。それが整備されれば、自然エネルギー は必ず安くなります。自然エネルギーでは、燃料費など限界費用が発生せず、ほとんどが初期投資負担だけで済むからです。


脱原発が達成できても、現代人は放射性廃棄物という負担を後世代に残していきます。現代人には後世代のために、われわれが残していく負の遺産の代わりに今自然エネルギーに投資していく責任があると思います。


ドイツの経験からすると、できるだけ早くやらないといけないのは、自然エネルギーの発電量をできるだけ早く予測するシステムの開発です。特に風力、 太陽光に関して。それに、新しい自然エネルギー普及とともに送電で発生してくる問題に対応できる送電オペレータの育成です。この2つは急務です。


もう一つは、メガソーラーや洋上風力のような大型設備に関する問題です。小生は大型設備には反対なんですが、それを禁止するのは無理だと思います。投資目当ての資本主義的なやり方と、地域資源を地域で有効に使うためのエネルギー自治のやり方を平行して進めていかざるを得ないと思っています。

ただ、エネルギー自治的なやり方を保護、促進する施策もたいへん重要になります。これも急務な問題です。ベルリンにも日本で認定権だけを取得して、後は大手企業とメガソー ラーをつくって金儲けしている会社があります。こうした手法には、歯止めが必要です。


送電線問題は、単に既存系統容量が十分か、十分でないかの問題だけでは済まなくなると思います。これまでは、発電、送電が同じ会社で行われていましたが、今後は発電側が送電側と調整なく、勝手に発電を行うようになっていきます。そして、その発電新規参入者が莫大に増えるという問題が発生しま す。ドイツではこの問題に対応するのが遅れ、今たいへん大きな問題になっています。


それで、送電線整備のために特別に法律を制定し、発電側、送電側が送電線整備で調整する枠組みをつくっています。これは、最終的に住民参加で送電線整備を確定することになっていますが、反対も多く、まだまだ調整がうまくいっていません。この問題も、早い段階で手をつけないと、ドイツの失敗を繰り返すことになりかねません。


次に、電力市場が変化してきますので、その市場設計を改革する必要が出てきます。具体的には、自然エネルギーが増えるに従い、リザーブとしてキープしておかなければならない(ガス)火力発電所が増えるということです。自然エネルギーの発電には、変動が大きいからです。じゃ、そのリザーブ発電所のコストを誰が負担するんだという問題になります。そこで、議論されるのがたとえばキャパシティマーケットです。簡単にいえば、リザーブ 発電所のために新市場を設けるといえるでしょうか。


同時に、自然エネルギーの発電変動を緩和するためのエネルギー貯蔵の問題をどうするか、考えないといけません。

ドイツは今、この段階でしょうか。これからさらにどういう問題が起こってくるのか、予想がつきません。


いずれにせよ、エネルギー転換が完了するまでにはこれからまだいろいろ新しい過渡期症状が出てくるということです。


(2014年10月11日、まさお)
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