2014年10月04日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
エネルギー自治の村フェルトハイム

ベルリンから南へ車で一時間余り走ったところに、フェルトハイムという小さな村がある。この村は、自然エネルギーだけでエネルギーが供給されているエネルギー自治の村だ。


フェルトハイムは風力中心。風車は33基ある。自然エネルギーのゼネコンがファンドなどで資金集めをして設置した。投資対象の風車だということ。地元の農民は、そのために土地を貸している。その地元で発電された電力をできるだけ地元で消費 しようとしてはじまったのが、フェルトハイムの試みだ。


まず、自然エネルギーのゼネコンを中心に村民が資金を出し合って、これまである既存の電力会社の配電線とは別に独自の配電線を設置した。これは、個人経営会社の形態をなっている。


農民の一部がバイオガス発電設備を設置したので、その熱を暖房などに利用するため、村民が共同で資金を出し合ってその熱を供給するための埋設配管を設置した。こちらは、共同組合の形態になっている。


風力発電は風の有る無しで発電量に大きな変動があるので、電力供給を風力発電だけに依存するわけにはいかない。そのため、いつも発電できるバイオガス発電で電力を安定供給している。


ただ、このバイオガス発電(熱電力併給システム)の熱が余るので、その熱の消費者として村にメガソーラーの架台を製造する小さな工場を誘致した。ただ、夏にはそれでも熱が余るので、将来的にはその熱をタンクに温水として貯蔵してその他の目的に利用したいとしている。


冬になると、それだけでは熱が足りなくなる可能性があるので、木くずを燃料とする小型の熱電力併給システムをリザーブとして設置した。


村の農家の家にはどこにも太陽光パネルがない。太陽光パネルはメガソーラー架台製造工場に可動式のパネルが1つあるだけ。これはシンボリックにおいただけ。フェルトハイムでは、太陽光発電は原則御法度になっている。


それは、こういう理由からだ。


風力発電された電力は、村民共同の配電会社が電気固定価格買取制度を規定している再生可能エネルギー法にしたがって買い取らなければならない。そのため、買い取り価格の安い風力発電とバイオガス発電だけに依存したほうがいい。村民の電気料金は1kWh当たり16セ ント。ほぼ再生可能エネルギー法にそった風力発電の買取価格に相当する。ベルリンでの今の電気料金は、1kWh当たり25セント を超えているので、このほうがずっとお得。


ただ、村民の誰かが太陽光パネルをつけると、それを自分で消費するか、村民の配電会社が買い取らなければならない。そうすると、その買取価格は1kWh 当たり40セントくらいになる。だから、太陽光発電はしないようにしているのだ。


配電線に出資しているのは20数軒で、1、2軒はこれまで通り電力会社から電気を供給してもらっている。熱供給のほうも、1、2軒が組合に参加していない。


フェルトハイムで消費しきれない余った電力は、自然エネルギーのゼネコンが地元の電力会社に買い取らせている。この分の利益は、地元には落ち ず、風力発電に投資した投資家に配当される。


フェルトハイムは、地産地消を100%実現した典型的な事例。エネルギー自治と か、エネルギー地産地消というのがいい。村の規模がたいへん小さいのだが、こうした試みを広げて、それを次第に大きな自治体へと波及させていくことが大事だ。 すでに、こうした事例はドイツでは結構増えている。もちろん、それぞれの地域で条件が異なるので、地元の条件に合わせていろいろな試みが行われなければならない。


(2014年1004日、まさお)
→→記事一覧
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ