ドイツのハインリヒ・ベル財団(緑の党系)などを中心にして作成された「ワールド放射性廃棄物レポート」が2019年11月11日、公開された。ヨーロッパの原発国を中心に、各国の放射性廃棄物の分類、排出量、処分するための資金調達状況(中間貯蔵、最終処分、廃炉)が報告されている。
前欧州議会議員で、ドイツのゴアレーベン反対運動に参加していたレベッカ・ハルムスさんのイニシアチブではじまった。
放射性廃棄物は、一般的に低レベル、中レベル、高レベルに分類される。しかしレポートによると、各国の法的な分類はそうはなっていない。
たとえばドイツの場合、放射性廃棄物は熱を発するものか、発しないものかの2つに分類されているにすぎない。
放射性廃棄物最終処分庁のフローリアン・エムリヒさんによると、これは、ドイツが当初から放射性廃棄物を地層処分することを前提にしていたからだという。地層を選出するには、放射性廃棄物が熱を発するかどうかが、重要な前提条件になる。
放射性廃棄物の量を削減するため、国際標準として年間線量10マイクロシーベルトのクリアランス基準が設けてある。クリアランス基準を下回る放射性廃棄物は通常、一般ないし産業廃棄物として原子力法の管理下から除外される。
しかし、世界の原発問題に詳しいフランス在住のマイケル・シュナイダーさんによると、フランスでは一旦原子力法の管理下で放射性廃棄物となったものは、その管理下から除外されることはないという。シュナイダーさんは、このフランスのやり方を世界でお手本にすべきではないかとする。
ただ、廃炉や放射性廃棄物を処分する各国の資金調達状況を見ると、原発大国フランスの対策の遅れが著しくなる。
最終処分の資金は、ドイツが100%確保しているとしているのに対し、フランスは必要と予想される資金の32%しか準備されていない。米国も、36%程度だ。
廃炉においても、ドイツがキロワット当たりの予算を940ドル用意しているのに対して、フランスでは450ドルしか用意されていない。必要な経費の58%しかカバーされていない勘定になる。
なお廃炉は、両国ともに電力側が責任を持って行わなければならない。
レポートは、チェコ、フランス、ドイツ、ハンガリー、スウェーデン、スイス、イギリス、米国の状況を把握している。
レポートはまず、フランス語とチェコ語に翻訳される予定という。
(2019年11月12日) |