前回の記事「原発止めても、ベース電力は安くなる」では、ドイツが2011年3月のフクシマ原発事故後に原子炉を8基停止したにも関わらず、むしろ電力卸市場においてベース電力の取引価格が下がったことをグラフで示した。
日本では、これは絶対におかしいと思っている人もいると思う。
でも、卸市場において電力取引価格が限界費用をベースにして、需要と供給の関係で決まることを考えると、当然の話なのだ。
この点については、本サイトの記事でもすでに何回か述べてきた。ただここでもう一度、どうしてなのかを説明しておきたい。
限界費用とは、燃料とメンテナンスなどのコストのことをいう。それに、原発の建設費を減価償却する年間コストを加えると、電力の卸市場における発電コストとなる。
原発の場合、減価償却期間は約30年だ。
それに対し、再生可能エネルギーの中心となる風力発電と太陽光発電では燃料を必要としない。だから、燃料費は発生しない。メンテナンス費も原発に比べると、比較にならないくらいにごく少額だ。メンテナンスは、ほとんど必要ないくらいだ。
さらに風力発電と太陽光発電では、発電施設が小型なので、建設費も大型の火力発電所や原子力発電所を建設するのとは比較にならない。減価償却期間も10年余りだ。
これだけ比較しても、再生可能エネルギーで発電するほうが、原子力発電するよりも格段に安いことがわかると思う。だから再エネによる電力が増えれば、卸市場での取引価格が下がるのは当たり前だ。
日本の電事連が原発は安いと主張しているのは、卸市場で取引される価格からいっている。でも前述したように、卸市場では再エネで発電された電力が一番安い。それが、前回の記事で示したように原発を止めてもベース電力が安くなる背景だ。
それに対して、日本では再エネのほうが格段に高いといわれる。それは、再エネで発電された電力には、卸市場で取引される価格に固定価格買取制度によって負担する額などが加算されるからだ。
でもそうして比較すると、卸市場での取引をベースに原子力発電と再エネ発電を比較していないことになる。比較するなら、同じ基盤で比較しなければ不公平だ。
でもそういうと、原発には固定価格買取制度の負担はないではないかという批判も出てくると思う。それなら、再エネ発電には電源三法による負担はない。
ただそう議論すると、発電コストの議論には終わりがない。
それを避けるため、一番公平な基盤で発電コストを比較するのは、卸市場をベースに比較することだ。そうすると、結論ははっきりしている。
再エネで発電するのが、一番安いのだ。
日本で原発が安いと主張されるのはごまかしである。それをもう一度はっきりと認識してもらいたいと思う。
(2019年10月15日) |