2019年6月09日掲載 − 再生可能エネルギー
電気自動車と雇用

ドイツの大手自動車メーカ本社の立地するニーダーザクセン州(フォルクスヴァーゲン)、バイエルン州(BMW、アウディ)、バーデン・ヴュルテムベルク州(メルセデス、ポルシェ)の3州州首相は6月7日、自動車産業の未来に向けて連携することで合意したと発表した。


ドイツでは電気自動車の普及が進まない中、ガソリン車、ディーゼル車に代わる電気自動車などの次世代自動車を促進することが急務になっている。


この状況に対して、大手自動車メーカ本社のある3州のイニシアチブで、ドイツ全体において未来自動車の開発と普及のテンポを加速させることで3州が合意したもの。研究開発とインフラ整備などを促進して、自動車産業において雇用を維持したいという。


現在ドイツでは、未来自動車において電気自動車が一歩進んだ形になっている。だが、燃料電池車や生物資源燃料車などの開発も同時に進めるという。


3州の合意は、自動車産業のための政治ロビー活動とも受け止められかねない。だが、3州どころか自動車産業国ドイツにとっては、電気自動車など未来自動車の開発を進めないと、今後死活問題になる。


ドイツは現実問題として、すでに電気自動車とそれに必要な蓄電池の開発で他国に遅れている。電気自動車ではギアなど自動車の部品数がガソリン車やディーゼル車に比べて半分に減るといわれる。それによって、自動車部品産業においてたくさんの失業者が出ることが心配される。


それだけに、ドイツの自動車産業界は従来技術のガロリン車やディーゼル車への依存をできるだけ先へ延ばしてきた。


雇用維持のため、政治がそれを後押ししてきたともいえる。


しかしその結果、ドイツは電気自動車など新しい技術の開発において国際競争で後手に回ってしまった状況だ。ドイツの自動車産業が将来、世界から取り残される心配さえも出てきている。


しかしこの現実に直面しながら、電気自動車によって自動車業界で雇用が大幅に削減されるとは、自動車産業界も政治もはっきりといえない状態が続いている。


3州州首相の会見でも、自動車産業界の将来の雇用問題について述べた州首相は一人もいなかった。むしろ、未来自動車の開発、普及によって雇用を確保、拡大するとだけ説明されたにすぎなかった。


技術革新によって、従来の古い技術に依存する産業が崩壊する。その結果、失業が増大して痛みが伴うのは避けられない。だからこそ、できるだけ早くそれに対処するための構造改革に取り組まなければならない。でも往々にして現実を明らかにしないで、過去の遺産にできるだけ長く依存する傾向があるのも事実だ。


そのほうが、当分の間は問題ない。でも、後で取り返しのつかないことになるとは誰もいわない。それに対して、現実を認識している政治も経済も責任を取ろうとはしない。


取り残されて苦しむのは、末端の労働者だけだ。


われわれは何度となく、同じ過ちを繰り返している。


(2019年6月09日)
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