前回、歩行者オンブズマンの役割について述べた。
以下では、取材したハイルブロン市において、街を歩行者にやさしくするため、具体的にどのような施策が講じられているかについて紹介する。
今回は、街のバリアフリー化を中心に事例を挙げる(写真をクリックすると、写真が拡大されます)。
これは、鉄道の線路を横断するために特別に設置された歩道橋だ。歩行者が遠回りせずに、鉄道の線路を横断できるよう、駅の近くに設置された。
歩道橋をバリアフリー化するため、歩道橋の両側にエレベーターが設置されている。
Sバーンは、都市鉄道の意味。大都市、都市間を結ぶ近距離交通において、最も重要な役割を果たす。そのSバーンが、ハイルブロン市内ではトラムのように路面を走っている。それによって、駅舎が不要になるほか、歩行者が駅まで長い距離を歩かなくてもいいようになっている。
写真は、ハイルブロン駅前のSバーン停留所。
歩行者オンブズマンのパプシュさんによると、障害者のために街をバリアフリーにするには、その調整が難しいという。というのは、障害者によってそのニーズが異なるからだ。
たとえば、視覚障害者用の誘導ブロックは、車椅子が必要な身体障害者や歩行器が必要な高齢者には移動の邪魔になる。
そのため、各種障害者団体と調整しながら、歩道表面の造形と誘導ブロックの位置を決めなければならないという。
歩道をバリアフリー化するには、その表面の特徴にも注意しなければならない。
ドイツでは、歩道が石畳になっている場合が多い。でもそれでは、車椅子や歩行器、さらには乳母車を使って移動する場合、障害になる場合がある。
そのため、石畳となっているところには、写真のように表面が平坦な石を入れて車椅子や歩行器などで移動しやすいように配慮する。
歩道の表面だけではない。歩行者の通る場所には、できる限り段差をなくすことも大切だ。車椅子や歩行器で乗り越えることのできる段差であっても、高齢者などが段差でけつまずいて怪我をすることもある。
そのため、自動車道路と歩道の境界も、人が移動するエリアでは段差がないようにする。
夏の暑い時に街を涼しくするため、歩道などに大きな樹木を植えて影をつくるのが大切だ。ただ植樹することによって、段差もできる。
そのため、木のあるところには格子状の鉄製カバーを入れて、歩道に段差ができないように工夫する。
また歩道には、座って休めるようにベンチを設置しておくことも大切だと、パプシュさんは説明してくれた。
次回は、歩行者専用道路や歩行者のための標識などについて事例を紹介したい。
(2019年10月12日)
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