2019年3月30日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
洋上風力発電の課題(2):港湾基地

風力発電施設は、大型化する傾向にある。ドイツではすでに、陸上でも6MWの大型機が設置されている。洋上風力発電は、6MW型機が主流。でも、今後さらに大型化することが予想される。


洋上風力発電施設は、下から基礎構造、タワー、ナセル/ハブ、ブレードで構成される。そのいずれの構成部材も長くて、ばかでかいのが特徴だ。それを製作、保管して、船に載せて建設現場に運んで、洋上で設置する。


ドイツの場合、洋上風力発電施設は海底に固定する着床式で設置される。その分、基礎部がとても大きい。


そのため、港に大きな出荷基地が必要となる。基地は、これら構成部材を保管するほか、一部を組み立てて塗装して、搬出する。


それを搬送するためには、大きな船も必要だ。そのため、大きなクレーンや道路なども含め、大きくて重いものを保管、出荷できる巨大な港湾基地が整備されなければならない。


ドイツでは、ドイツ北西部北海沿岸のブレーマーハーフェンとクックスハーフェンで、洋上風力発電の港湾基地を取材したことがある。左の写真は、クックスハーフェンで撮影した。


数年後にも、クックスハーフェンの基地を取材した。だがその時は、基地敷地にそれほど多くの部材が保管されていないのでびっくりしたことがある。


これが、洋上風力発電の一つの課題を象徴していると思う。


発電施設の建設が続く限り、港湾エリアは活況だ。たいへん広い敷地も必要だ。しかしいくつもの建設計画が終了していくにしたがい、メンテナンスが主流になる。ただそれには、大きな敷地は必要ない。


でも、必要なくなった巨大な基地はどうするのか。いつくるかわからない新しい建設計画を待って、維持し続けるのか。洋上風力発電する区域では、発電施設をいくつでも設置できるわけではない。設置できる発電施設の数には、限りがある。


ブレーマーハーフェンは、元々造船の町だった。しかし地元造船会社の倒産に伴い、造船だけに依存していた町では、たくさんの失業者が出た。その構造改革のために、洋上風力発電産業を誘致。造船所跡などに、洋上風力発電の各部材の製作会社がたくさん立地した。


ブレーマーハーフェンには、造船産業のほかに大きな港がある。そのため、港湾設備を洋上風力発電の基地化することはそれほどたいへんなことではなかった。


しかし、同市は造船産業に続き、再び一つの巨大産業に依存することになる。


確かに、洋上風力発電によって新しい雇用が生まれ、失業者は減る。でも洋上風力発電施設の建設が、そう長く続くわけではない。促進区域では、いずれ洋上風力発電施設で飽和状態となる。そうなると、巨大な基地の需要は少ない。


その時、労働者はどうなるのか。


搬送する部材の大きさを考えると、港湾基地は設置場所に近いほうがいい。そう遠方から、設置部材を運ぶわけにもいかない。


そうなると、巨大な港湾基地の寿命は比較的短いといわなければならない。


それでは、地元経済が持続しない。それが、巨大産業を誘致する時の大きなリスクだ。


(2019年3月30日)

洋上風力発電の課題
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(3)命がけの作業員 (2019年4月27日)
(4)漁業権は保護されない (2019年5月05日)
(5)国が指定する洋上風力発電区域 (2019年5月11日)
(6)海底ケーブル (2019年5月25日)
(7)発電施設の寿命 (2019年6月01日)
(8)構造上の問題 (2019年6月22日)
(9)必要なのか? (2019年7月08日)
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