2019年4月27日掲載 − 再生可能エネルギー
洋上風力発電の課題(3):命がけの作業員

造船業から洋上風力発電産業に構造改革したドイツ北部のブレーマーハーフェンを取材する時だった。


ブレーマーハーフェンに、洋上風力発電産業に従事するための職業訓練施設があることを知った。どういうものなのか、とても関心があったので取材することにした。いってみるまで、どういうことをするのかまったく想像もしていなかった。


洋上風力発電施設の建設とメンテナンスは、もちろん洋上で行われる。いってみてわかったのは、その時の作業の安全保全のための職業訓練だった。訓練の中心は、作業中に海に落下した時に備え、自分で救命するための訓練だった。要は、海からいかに救命ボートに這い上がるか訓練するのだった。


施設には、プールがある。プールには、ゴムの大きな救命ボートが浮かんでいた。プールには波がないので、簡単に這い上がれるかと思ったが、そうではない。海からゴムボートに這い上がるのは並大抵のことではない。何回も何回もできるようになるまで、訓練が繰り返される。


それができるようになると、今度はプールに人工の波を立てる。最初は、波を大きくしないで訓練をはじめる。ちょっとした波だけで、ボートに這い上がるのが数倍も難しくなる。何回やっても、ボートに這い上がれない。できるようになると、波がさらに高くなる。波が高くなればなるほど、海から救命ボートに這い上がるのは至難の技だ。


しかしこの訓練を受けないと、洋上の作業に出ることはできない。


この訓練を受けるのは、洋上で作業するための一種の資格のようなものなのだという。


洋上風力発電施設では、いつ何時海にすべり落ちるかわからない。洋上なので、風もかなり強い。海に落ちたら、自分で救命するしかない。


訓練施設にいってはじめて、洋上風力発電が作業員にとても過酷な作業を強いることになるのを知った。冬の寒い時の作業は、もっと過酷なものとなる。洋上風力発電に係る作業は、命がけなのだと自覚させられた。


そこまでして、洋上風力発電をする必要があるのだろうか。


ぼくには、必要とは思えない。


洋上風力発電は再生可能エネルギーとはいえ、従来の原子力発電や火力発電と同じように大型投資、大型設備と、集中型の発電方法だ。ただ再生可能エネルギーの本質は、小型設備を分散させることにあるのを忘れてはならない。


それにも関わらず洋上風力発電を進めるのは、ぼくには小型設備に投資できない大手電力会社の「救命措置」にしか思えない。


(2019年4月27日)

洋上風力発電の課題
(1)統一ルール (2019年3月23日)
(2)港湾基地 (2019年3月30日)
(4)漁業権は保護されない (2019年5月05日)
(5)国が指定する洋上風力発電区域 (2019年5月11日)
記事一覧へ
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ