2019年5月05日掲載 − 再生可能エネルギー
洋上風力発電の課題(4):漁業権は保護されない

ドイツ北部のバルト海沖合では、小エビ漁業が盛んである。小型の漁船によって、小型底引き網で海底近くに生息する小エビをすくう。バルト海沖合が遠浅であるからできる漁法でもある。


洋上風力発電施設の建設によって、その底引き網漁はどうなるのか。それが知りたかった。


ドイツの漁業団体に問い合わせ、沖合漁業関係の団体を紹介してもらった。漁船も見たかったので、洋上風力発電の港湾基地のあるドイツ北部のクックスハーフェン港において、沖合漁業団体の理事で、小型漁船の船長でもあるヒンナースさんから話しを聞いた。


クックスハーフェン港には、小型漁船がたくさん並んでいた。ヒンナースさんから聞いてはじめて、バルト海沖合で小型底引き網による小エビ漁業が盛んなことを知った。


ヒンナースさんの息子さんが、船の片付けと掃除をしていたところで、まだその日の朝に漁獲した小エビを見せてもらうこともできた。


ヒンナースさんにまず、沖合漁業団体が洋上風力発電についてどう思っているかを聞いた。するとヒンナースさんは、苦笑いしてどうしようもないという身振りをしながら語り出した。


漁業団体は、ドイツの沖合ではじめて洋上風力発電施設が1基設置される時に、それを差し止めるために訴訟を起こしていた。だがその判決は、漁業団体にとってまったく想定していないものだった。


裁判所の判断はこうだった。


海は、共有のもの。いくつもの目的に共用して使うものだ。漁業だけに使用権があるわけではない。だから、洋上風力発電にも使用権がある。漁業権は、その海の共用権の下でしか行使できない、保護されないというものだった。


そのため、漁場が荒らされ、漁業に損害がでるという漁業団体のいい分は却下された。洋上風力発電施設の建設は、止めることができなかった。


それに伴い、洋上風力発電によって漁場が荒らされるだけではなく、発電された電気を送電する海底ケーブル周辺では底引き網漁もできなくなった。


それが、裁判所のいう「共用」であり、両立という現実だった。


ヒンナースさんは、「(洋上風力発電には、)もう手の打ちようがないのだ」といった。


(2019年5月05日)

洋上風力発電の課題
(1)統一ルール (2019年3月23日)
(2)港湾基地 (2019年3月30日)
(3)命がけの作業員 (2019年4月27日)
(5)国が指定する洋上風力発電区域 (2019年5月11日)
(6)海底ケーブル (2019年5月25日)
(7)発電施設の寿命 (2019年6月01日)
(8)構造上の問題 (2019年6月22日)
(9)必要なのか? (2019年7月08日)
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