2019年6月22日掲載 − 再生可能エネルギー
洋上風力発電の課題(8):構造上の問題

洋上風力発電では、陸上風力発電においてより発電出力の大きな風車が設置される。ドイツでは当初、6MWの風車が普通だったが、現在はさらに大きな8MWの風車も出てきている。


洋上風力発電では、風車はかなり大型の発電施設となる。


洋上風力発電パークは、数10基の風車で構成されることが多い。ただ一度に数10基設置されることはなく、発電パークは次第に拡大されていく。


洋上風力発電パークには、さらに変電施設やメンテナンス用のプラットフォームなども必要だ。陸地に電気を送電するために、海底ケーブルも設置しなければならない。


海底ケーブルの問題はすでに述べたが、洋上風力発電の発電容量が全体として大きいだけに、陸地側にもそれを受けるだけの容量の大きな送電網が必要となる。


これら全体をまとめて見ると、洋上風力発電は確かに再生可能エネルギーによる発電方法だが、洋上風力発電は全体として総合的で、大規模な設備が必要となる。そのためには、莫大な投資も必要だ。完成するまで、時間もかかる。


これは、洋上風力発電が大規模施設、巨大投資の構造を持っているということだ。


洋上風力発電では、市民発電などは考えられない。洋上風力発電において市民参加が可能なのは、株主として資本参加する以外にない。でもそれでは、市民の権限は小さい。


既存の石炭火力発電や原子力発電も、大規模施設、巨大投資の構造を持っている。それと比較すると、洋上風力発電は既存の発電構造とどこが違うのかと疑問になる。


再生可能エネルギーでは、既存の発電構造から抜け出し、小型施設を分散化させることに意義があるはずだ。だから市民には、自らの意思で発電方法を選択する自治権もある。


しかし洋上風力発電では、市民が資本参加しても株主としての市民の力は小さい。そのため大株主の下、市民の自治権はない。


ドイツでは、大手電力会社が再生可能エネルギーに出遅れてしまった。大手は、規模が小さすぎて小型施設に投資できないという問題もある。この問題を解決して、大手も再生可能エネルギーに進出できるようにするため、ドイツは大型の洋上風力発電を戦略的に推進してきたともいえる。


洋上風力発電は本当に必要なのかと聞くと、陸上での小型分散型発電構造と洋上風力発電による大型集中型発電構造の二本柱にしたほうが安定供給しやすいから必要だといわれる。特にドイツの場合、風力発電量が北部に集中するので、電気を南部に多量に供給するには、洋上風力発電も必要になると説明される。


ただ以前、配電網事業者の技術者に小型施設分散型の構造だけでは安定供給は不可能なのかと聞いたことがある。この技術者は、中圧送電網に冗長性を持たせれば、小型施設分散型構造でも安定供給が可能だと答えてくれた。


それなら、どうしてわざわざ二本柱にするのか。技術者は「政府の政策が変わったからだ」と、答えた。


社民党と緑の党による中道左派政権は、小型分散型構造だけで再生可能エネルギーを促進していた。だが政権交代で中道右派政権に代わると、再生可能エネルギーに出遅れた大手電力を救済するため、二本柱構造に政策転換。それによって、大手が洋上風力発電によって再生可能エネルギーに進出できる道を開いたのだった。


こうして見ると、洋上風力発電は再生可能エネルギーであっても、従来通りの大型集中型発電と変わらない。発電構造に変化ももたらさない。


(2019年6月22日)

洋上風力発電の課題
(1)統一ルール (2019年3月23日)
(2)港湾基地 (2019年3月30日)
(3)命がけの作業員 (2019年4月27日)
(4)漁業権は保護されない (2019年5月05日)
(5)国が指定する洋上風力発電区域 (2019年5月11日)
(6)海底ケーブル (2019年5月25日)
(7)発電施設の寿命 (2019年6月01日)
(9)必要なのか? (2019年7月08日)
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