前回、放射性廃棄物を最終処分する共通の問題の一つとして、放射性廃棄物が危険であることと、放射性廃棄物が処分されていることを後世にどう伝えるのかという問題があると書いた。
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ゴアレーベン最終処分調査施設の地下約1000メートルにある坑道 |
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もう一つ共通の問題は、長い期間に渡って最終処分するに当り、処分された放射性廃棄物を管理する人材をどう確保していくことができるのかだ。これも、たいへん重要な問題だ。
放射性廃棄物を管理するには最低、核物理学を専攻して、放射線防護の問題についてわかる人材が必要だと見られる。被ばくした場合の医療問題についてわかる人材もあったほうがいいかもしれない。でもそれは、放射線医療がある限り、この分野の人材が確保されているとも思う。どうだろうか。
もちろん、放射線医療がこれからまだ長い間に渡って必要とされるかどうかは、現段階ではわからない。そうなった場合のことも、考えておかなければならない。
特に、現在の最終処分方法では一旦処分した放射性廃棄物を掘り起こして、地上に出すことが考えられている。放射性廃棄物を無害化する方法が、その時までに開発されているかもしれないからだ。
ドイツでは、その期限を最終処分後500年までとしている。そこまでは、核物理学についてまだ活発に研究されていなければならない。それには、まだたくさんの人材が必要だ。
ただ現在の若者たちの関心を見ると、核物理学どころか、物理学自体に関心を持つ学生が減っている。学生の関心は、今後一層デジタル化に関わる学科に集中してしまうのではないかと心配される。
また脱原発した状況で、一体誰が将来性のない学問に関心を持つだろうか。それを学んだところで、将来希望のある職業につけるわけではない。過去の遺産の管理という後片付けをするだけだ。
ぼくが10年余り前にヨーロッパ各国で原発を取材して回った時、この問題についても質問した。各国、人材確保の重要性は理解していた。でも、それを具体的にどう解決していくかは、ほとんどの国でまだどうしていいかわからない状況だった。
その状況は、まだ変わっていないと思う。
最終処分の問題は、単に技術的な問題や、住民のアクセプタンスの問題ではない。人の問題でもある。そうでないと、最終処分の安全と管理を保証することができない。
(2020年6月02日) |