前回、放射性廃棄物の最終処分では、世代間を通して民主主義が成り立たない問題があることを指摘した。
でも、まだ生まれていない世代の声を最終処分に反映させて、世代間に少しでも民主主義を持ち込む手立てはないのだろうか。
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ゴアレーベン最終処分調査施設内地下約1000メートルの坑道。現在、坑道内での作業は行われていないが、建機などがまだ地下にある。 |
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そこで考えられたのが、最終処分中に地下層に埋められた放射性廃棄物を掘り起こして、地上に回収する可能性を残しておくことだ。
それには、2つの要因があると思う。
一つは、将来放射性物質を無害化する技術が開発されるかもしれないからだ。そうなれば、放射性廃棄物は危険ではなくなる。そのためには、地下層に処分された放射性廃棄物が回収できなければならない。
もう一つは、この無害化とも関係している。放射性物質を無害化できる技術が開発された時、放射性廃棄物をどうするか。それを、その時の世代が自分たちで判断できる可能性を残しておくためだ。あるいは、回収の可能性を残しておけば、次の世代が無害化技術に関わらず、ぼくたちの世代が決めた最終処分方法と最終処分地に関して、修正することができる。
そうなれば、次の世代にも最終処分に関して決定権を残しておくことができる。世代間に、民主主義を残しておくことができる。そういう論理だ。
しかし、それでも問題が残る。すでに述べたように、たとえばドイツでは回収の可能性は500年しか残されない。それに対して、最終処分には100万年というとてつもなく長い期間が規定されている。いずれにせよ、最終処分が終わるまでの全期間に対して、回収の可能性を残しておくことは不可能だ。
さらに、技術的な問題もある。すでに述べたように、現在、500年も耐久性のある容器はまだ技術的に製造することができない(「長期に耐久性のある容器はあるの?」)。でも、回収する時に容器がまだ丈夫で、十分に耐久性がない限り、地下層に処分された放射性廃棄物を安全に回収することはできない。
回収の可能性を残しておいても、本当に次の世代に現在の世代が決めた最終処分について何らかの変更を施すことができるのか。現時点では、それはまだ保証されていない。
(2020年7月07日) |