2020年5月26日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
後世代に危険をどう知らせる?

放射性廃棄物を最終処分する方法として、地層処分が国際的に最も適しているとされていると書いた。地層処分に関わる問題に入る前に、放射性廃棄物をどう処分しようがしまいが関係なく、共通の問題がある。まず、そのことから話したい。


放射性廃棄物を最終処分する期間として、たとえばフィンランドが10万年としている。ドイツの場合は100万年と規定されている。想像できないくらい長い年月だ。


問題は、そのめちゃくちゃ長い最終処分の期間が終わるまで、どうやって放射性廃棄物が処分されていることを後の世代に伝えていくかだ。放射性廃棄物に含まれる放射性核種が崩壊して汚染度が減るから、心配しないでもいいではないかというかもしれない。


ただ最終処分しても、安全が100%保証されるわけではない。後の世代に、それが放射性廃棄物で、危険であることを伝えなければならない。それが、放射性廃棄物を排出し、処分しなければならないぼくたちの責任だ。


その時問題になるのは、現在使われている言語や記号、論理が、10万年後あるいは100万年後まで理解してもらえるかどうかだ。


ぼくたちは現在、紀元前の2000年余り前の言語や記号もよく理解できていない。放射性廃棄物の危険性を考えると、危険性を長期に渡ってしっかりと伝える方法を考えななければならない。


何らかの記号で伝えるのか、あるいは絵文字のようなものがいいのか。それは、まだよくかわっていない。


ぼくは、10年ほど前にドイツの放射線防護庁のケーニヒ長官にこの問題について質問したことがある。長官は、「その問題は理解している。今後研究して適切な方法が考えるしかない」といった。


ケーニヒ長官は現在、ドイツの放射性廃棄物の中間貯蔵と最終処分を管轄する放射性廃棄物処分安全庁の長官を務める。放射性廃棄物を安全に処分する最終責任者だ。


ただぼくはこれまで、ドイツがこの問題について何らの解決策を見出したとは聞いていない。世界でも、この問題が真剣に検討されていないのではないかと心配だ。


(2020年5月26日)
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ワールド放射性廃棄物レポートのダウンロード:
The World Nuclear Waste Report 2019 (英語版)
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