2020年9月15日掲載 − 脱原発
最終処分地選定と市民団体

すでに書いたように、最終処分地の選定を再開するため、ドイツでは2013年7月に最終処分地選定法ができた。ただそこに至るまでには、いろいろな問題を解決する必要があった。


たとえば一つは、超党派で最終処分地の選定を行うこと。もう一つは、それまで続けられてきた最終処分地の適正調査をどうするかだ。


この2つの問題は、微妙に絡んでいたともいえる。というのは、それまで最終処分地の適正調査の行われてきたゴアレーベンのあるニーダーザクセン州は、社民党が強い地域。さらに、ゴアレーベン周辺地区では緑の党の議員の影響力も強くなっていた。


そのため、それまでの適正調査をどう扱うかで、社民党と緑の党が納得すれば、最終処分地の選定を超党派で行うのがより容易になる。


その間、ゴアレーベンの地層に広がる岩塩層が最終処分に適するとしてはじめた適正調査が、地質学的に十分な検討もせずに決定されていたことが判明した。


ゴアレーベンで反対運動を続けてきたグループは、最終処分地を再選定するプロセスからゴアレーベンを除外することを求めた。それが、最終処分地の選定を再開する前提だとした。


しかし政治的には最終的に、これまでの適正調査を一切白紙に戻すことで合意した。これは、ゴアレーベンが再調査の対象になるということでもある。


ただこれが、最終処分地選定法の次のネックになる。


最終処分地選定法はまず、最終処分地の選定を住民参加の形で行う手順を決めるためのものだった。その手順は、連邦議会(下院)の下に特別諮問委員会を設置して審議、諮問される。委員会は、各党の代表と地質学や核物理学、社会学などの専門家、弁護士の他、市民団体の代表で構成されると規定された。


特に市民団体の代表が委員会に参加しないと、委員会自体は成立しない。それが、委員会の前提条件だった。


ただ市民団体の多くでは、最終処分地の選定を再開しても、今回のプロセスが結局またゴアレーベンに決定するためのものだとの思い込みが強かった。最終処分問題に対する政府への不信が強く、今回もまた政府に騙されるだけ。それなら、委員会に参加する必要はないとする市民団体が多かった。


ぼくは、市民団体が連邦議会の最終処分委員会に参加するかどうかで話し合う会議を取材したことがある。


会議ではまず、政府の代表から説明を受ける他、各市民団体代表の意見を聞くなどした。しかしいざ委員会に参加するかどうかのディスカッションになると、お互いに罵声を浴びせ合うなど、議論にならない状態となった。


反原発運動を続けてきた市民団体には、政府の試みに参加すること自体が裏切り行為だった。ぼくは、強硬派とは話し合いの余地はないのだと感じた。泥仕合いになるだけだと思った。


市民側はどうするつもりか。市民団体の代表が参加しない限り、委員会は成立しない。ぼくは、無理なのかとも思っていた。


とこがそれから数日して、会議ではそれほど委員会への参加に意欲を示さなかったと思ったドイツ最大の環境団体BUND(ドイツのFoE)が、委員会に参加することを表明。「裏切り者」となる決断をした。


それとともに、ドイツの反原発運動は割れた。しかしぼくは、BUNDの決断は勇気ある英断だったと思う。それなくして、ドイツの最終処分地の選定は進まなかった。


ここで一つ、はっきりさせて置きたいことがある。


日本の政治と経済界、官僚では、市民を小馬鹿にして市民の考えはどうでもいいという姿勢が強い。日本で政府の委員会に市民団体が参加できるようになったのは、本心から市民と議論したいからではない。「市民を参加せせた」というアリバイとして市民団体を入れているにすぎない。


それに対しドイツでは、社会的コンセンサスを求めるには、市民の声を聞き、市民の力を借りなければならないとの思いが強い。今回の最終処分問題も社会的コンセンサスがないと、うまくいかない。そのためには、どうしても市民と共同で進めることが必要になる。


それは、福島第一原発事故後に脱原発を確定する時もそうだった。脱石炭を決める時もそうだった。


この点は、ドイツでしっかり認識されている。これが、ドイツと日本の間で大きく違う点だ。


(2020年9月15日)
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